未分類

心臓、飛んでいる、飛んでいる

あれは、とある冬の夜のことでした。田舎町の外れにある古い診療所の噂を耳にしたんです。 「夜中に診療所の近くを通ると、空に心臓が飛んでいるのを見た、という人がいる」そんなバカな話があるか、と思いながらも、私は仲間と一緒にその場所へ向かいました...
未分類

バラックを燃やした

……そうです。あのバラックを燃やした時、中に誰かがいたんです。 あれは高校を卒業してすぐの頃。地元の仲間と廃墟探検をして遊ぶのが、ちょっとしたブームになっていました。人が住んでいない空き家や工場跡を見つけては、夜中に忍び込んで肝試しをする。...
未分類

もう、引き剥がすな

私がまだ小さかった頃、近所の古い神社の境内に、大きな御神木がありました。どっしりと根を張った、年季の入った欅の木で、村の人たちは「触れるな」と言い聞かせていました。理由は教えてくれませんでしたが、言い伝えではこう言われていたんです。 「あの...
未分類

懺悔しろよ

もう、何年前になるんでしょうかね。あの日、私たちは放課後の教室に残って、くだらない話をしていた。よくある悪ふざけです。教室に一人残って掃除をしていた彼を、笑いながらからかった。机を蹴ったり、ノートを隠したりして――**「懺悔しろよ」**って...
未分類

お酒足

まだ若い頃、仕事仲間と忘年会をした時のことです。飲みすぎた私は終電を逃してしまい、仕方なく夜道を一人で歩いて帰ることになりました。酔いのせいでフラフラしていて、足元が定まらない。それでも何とか家へ向かって歩いていると―― 「あれ?……おかし...
未分類

お前の代わりに

小学校の放課後、友人たちと河原で遊んでいたんです。少し大きめのゴムボールを蹴っていたら、誰かの蹴り損ねたボールが川の中へ転がってしまった。水はそこまで深くなかったし、流れも穏やかだったので、私は迷わずボールを追いかけました。 靴を脱ぎ、ズボ...
未分類

スズメバチ

夏休みに入って間もない頃、家の裏手の雑木林で一人遊んでいたんです。都会育ちの人には馴染みがないかもしれませんが、田舎の子供は、裏山がちょっとした遊び場なんですよ。木に登ったり、虫を捕まえたりして過ごすのが日常でした。 その日も、蝉の声が響く...
未分類

渡ってみろ

仕事が終わって、取引先の人と酒を酌み交わし、夜遅くなってから宿に帰ろうとしました。その時、飲み屋の主人がこう言ったんです。 「帰り道、橋を渡るなら気をつけて」 酔いもあって、最初は冗談かと思いました。でも、妙に引っかかる言い方だったんですよ...
未分類

ガラス片

その日は、夕方に近所の神社へお参りに行ったんです。いつもなら無人の境内が、その日は妙に騒がしかった。いや、正確に言えば、人影はないのに、何かがざわめいている感じがしたんです。風が吹いて、木々が揺れているだけ……と、無理に自分を納得させながら...
未分類

寒くないか

その日は、仕事が早く終わったんです。空が茜色から青黒く変わり始めた頃、人気の少ない住宅街を歩いていました。地面には薄く霜が降りていて、踏むたびにザクザクと軽い音がする。ふと気づくと、前方に小さな影が見えました。年の頃は五、六歳でしょうか。子...