2025-01

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星さん

その人は、僕たちの間で「星さん」と呼ばれていた。本名は分からない。ただ、彼がよく星の模様が描かれた古いトレーナーを着ていたから、自然とそう呼ぶようになったのだ。 星さんは町外れの廃工場の近くによく現れた。昼間はほとんど姿を見せず、僕たちが夕...
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手品先生

小学生の頃、私たちのクラスに臨時で来た先生がいた。名前は村井先生と言ったが、子どもたちの間では「手品先生」と呼ばれていた。 村井先生は授業の合間や休み時間に、よく手品を披露してくれた。カードを使ったものや、コインを消す簡単なものが多かったが...
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ひもヒモ紐紐

田舎に住む祖母の家には、使われなくなった納屋があった。物心ついた頃からそこで遊ぶのが好きだったが、大人たちはいつも「あまり近づかないように」と注意していた。理由はよく分からなかったが、古くて危ないからだと聞かされていた。 ある日、小学校の夏...
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私の財布

その日、私は仕事帰りに小さな駅の近くを歩いていた。遅い時間だったせいか、人通りはほとんどなく、街灯の光だけが静かに地面を照らしていた。 ふと、歩道の端に何か落ちているのが目に入った。黒い革製の財布のようだった。周囲を見渡しても、誰もいない。...
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パーキングでのことでした

深夜、長距離運転の疲れを癒やすために、高速道路のパーキングエリアに立ち寄った。大きなサービスエリアではなく、こじんまりとした施設で、駐車場には数台のトラックが停まっているだけだった。 トイレを済ませ、飲み物でも買おうと売店の方向に歩き出す。...
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いない、いない、ばぁ

その夜、友人の家で飲み会を開いた。大人になってからも仲の良い数人で集まるのは楽しいものだ。夜も更けて話題が尽き始めた頃、誰かがふざけて言い出した。 「いないいないばぁって、さ、何か怖くない? 顔を隠してる間に何かが変わってたらとかさ。」 酔...
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やまびこ

山歩きが趣味の友人に誘われ、私は休日に近場の低山に登ることにした。標高はそれほど高くないが、登山道は薄暗い木々に覆われており、静けさが際立つ山だった。 登山道の途中には小さな展望台があり、そこからは街並みを一望できる。友人と軽い昼食をとりな...
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林に紛れている

その林は、街の郊外に広がる、いかにも何の変哲もない場所だった。古びた公園に隣接し、鬱蒼とした木々が立ち並んでいる。昼間でも薄暗く、人通りはほとんどない。地元の人たちは、「あそこは出る」と言いながらも、特に具体的な話をするわけではなかった。私...
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立ち食い蕎麦屋

その立ち食い蕎麦屋に行ったのは、終電を逃した帰り道だった。都心の繁華街から少し外れた路地に、古びた提灯がぶら下がっているのが見えた。深夜にもかかわらず、店内にはぽつりぽつりと灯りがついている。腹が減っていたこともあり、ふらっと足を向けた。 ...
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ドライブイン

そのドライブインに立ち寄ったのは、偶然だった。仕事で地方を回っていた帰り道、夜遅くなって腹が減り、国道沿いにぽつんと灯りが見えたのだ。周囲は暗く、街灯もまばら。看板には赤い文字で「ドライブイン○○」と書かれていたが、○○の部分が風雨にさらさ...