2024-12

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空白の写真

祖父が亡くなったあと、遺品整理をしていたときのことだ。親戚一同が集まり、押し入れや箪笥の中から古いアルバムや日用品を引っ張り出していた。僕も手伝いながら、祖父の趣味だった写真のアルバムをめくっていた。 祖父の写真はどれも丁寧に整理されていて...
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帰り道の影

夜のバイトを終えて自転車を漕いでいた。道は田んぼに囲まれた細い一本道で、街灯がぽつぽつとあるだけ。風もなく静かで、聞こえるのはタイヤがアスファルトをこする音と、遠くで鳴くカエルの声だけだった。 その日は特に疲れていたから、早く帰ってシャワー...
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無音の足音

アルバイトで夜間警備の仕事をしていた。場所は廃業したデパートのビルで、昼間は事務所として一部が使われているが、夜になると人気がなくなる。 その夜、僕は一人で巡回をしていた。4階まで見回りを終え、エレベーターで5階に向かおうとしたが、なぜかド...
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呼ぶからね

田舎の古い家には、不思議なことがいくつもあった。特に、居間の片隅に置かれた三つの座布団が妙だった。誰もそこに座ることはないし、祖母に聞いても「あれはそのままにしておきなさい」と言うだけだった。 ある日、僕はふと座布団をじっと見つめていた。古...
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トンネルの中

夏休み、友人たちと心霊スポット巡りをすることになった。メンバーは僕、リョウ、アキラ、そしてナオコの4人。地元で有名な「旧トンネル」を目指し、夜中に車で向かった。 そのトンネルはすでに使われていない廃道で、薄暗い山道の奥にひっそりと口を開いて...
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つじつま

その道は「ねじれ道」と呼ばれていた。地元では有名な話で、名前の通り、どこか歪んでいる感覚を覚える道だった。 大学生のころ、僕は帰省するたびに車でその道を通っていた。近道だから使う人も多かったが、決まって「気味が悪い」と言う人が多い。地元の友...
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ほつれ

あの夜、俺はなぜか眠れなかった。蒸し暑い真夏の夜、風もないのにカーテンがひらひらと揺れている。窓は閉めたはずなのに。 テレビの砂嵐が部屋の中に響いている。寝る前に消したはずだったのに、いつの間にか点いていた。消そうとリモコンを手に取ったが、...
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見つけたよ

小学生のころ、僕たちの遊び場は学校の裏山だった。木々が生い茂り、ちょっとした冒険気分が味わえる場所で、授業が終わるとランドセルを放り投げ、夢中で遊びに行った。 その裏山の中腹には「見つけ石」と呼ばれる奇妙なものがあった。苔むした大きな石で、...
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踏切の手

中学生の頃、僕が住んでいた町はどこか薄暗くて静かだった。小さな商店街と、古びた駅が中心にある町で、線路を挟んで住宅地と田んぼが広がっている。電車の本数も少なくて、踏切の音だけが生活のリズムを刻んでいた。 その踏切には、町で有名な奇妙な噂があ...
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鉄塔の向こう

小学生のころ、僕たちの遊び場は町外れにある古びた鉄橋だった。線路の脇に大人が捨てたお菓子の袋やタバコの吸い殻が散らばっていて、子どもにとっては「大人の世界」を垣間見れる特別な場所だった。 鉄橋の下には小川が流れていて、夏になると水遊びをする...