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貴方の番です

あの日、大学時代の友人たちと久しぶりに集まった。居酒屋で一通り盛り上がった後、「もう一軒行こうか」と誰かが言い出して、自然とカラオケに向かうことになった。駅前のチェーン店に入り、6人で一番広い部屋に通された。壁際には低いテーブルとソファ、そ...
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思い出せない

学生時代、アルバイトをしていた小さな倉庫での話です。その倉庫は、古びた商店街の端にあり、夜になると周囲の店が閉まるせいか、妙に静まり返る場所でした。私がそこで働いていたのは夕方から深夜にかけての時間帯で、荷物の整理や翌日の配送準備が主な仕事...
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忘れられた写真

大学時代の友人に、写真が趣味の男がいた。彼の名前を仮に高橋としておこう。高橋はとにかく古い建物や廃墟を撮るのが好きだった。大学のサークル旅行でも、みんなが観光地で写真を撮る中、一人だけひっそりと廃屋に入ってはシャッターを切っていた。ある意味...
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人形の腸

実家の物置を整理していたときのことだ。母が古い箱を指さし、「これ、お前が小さい頃に遊んでた人形じゃないか?」と言った。箱の中には埃をかぶった布製の人形が入っていた。顔立ちは簡素で、ボタンの目と糸で刺繍された口がかろうじて表情を作っている。 ...
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廃墟の人

大学の頃、仲間内で廃墟巡りが流行った時期がある。無人の工場や廃校、廃ホテル――どの場所も似たように荒れ果て、雑草や瓦礫が侵食しているだけの空間だった。それが奇妙な魅力を持ち、私たちは次の「目的地」を探し求めていた。 ある日、友人のKが面白い...
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口を開けて

私は歯医者が苦手だ。痛みや音が嫌というより、ただ何となく気分が悪くなるのだ。だが、放置していた虫歯が耐えきれなくなり、近所の小さな歯科医院に行くことにした。 その医院は古く、子どもの頃に通っていた記憶がある。狭い待合室、飾り気のない受付、独...
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隙間

私が今のアパートに引っ越してきたのは、一年ほど前のことだ。家賃が安く、駅からも近いという好条件で、迷わず契約を決めた。最初のうちは快適だったが、住み始めて数ヶ月が経った頃から、部屋のどこかに「隙間」を感じるようになった。 具体的には、夜にな...
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虎と猫

私の祖父は、昔から「寅の年は猫を迎えるべきではない」と言っていた。幼い頃の私はその意味がわからず、ただ祖父の迷信のようなものだと聞き流していたが、実家に戻ったある冬の日、祖父がその話をした理由を知ることになる。 その年は寅年だった。久しぶり...
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呼んでない

会社の同僚たちと飲みに行った帰り道のことだ。その日は金曜日で、二次会、三次会と盛り上がり、深夜を過ぎてようやく解散となった。私は終電を逃し、仕方なく歩いて自宅まで帰ることにした。 街灯の少ない住宅街を一人で歩いていると、背後から「おーい」と...
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怪談

それは、ある村に伝わる不思議な風習についての話だ。 大学の民俗学ゼミで知り合った先輩から、地方のとある集落についての調査を頼まれたのが始まりだった。山間部の小さな村で、古くから「合掌」という行為に特別な意味を持たせてきた場所だという。仏教的...