toudori

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廊下の音

私が小学生だった頃、古い団地に住んでいた。築年数は30年以上で、壁は薄く、隣の家の物音が聞こえるような場所だった。夜になると廊下が妙に静かで、誰もいないはずなのに「コツ、コツ」と歩くような音がすることがあった。 ある晩、家族がみんな寝静まっ...
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深夜のカーテン

あの夜のことは、今でも鮮明に覚えている。大学から帰ってきたのは夜の11時を回った頃だった。疲れ切っていて、ただ眠りたい。それだけだった。 部屋に入ると、窓のカーテンが少しだけ開いているのに気がついた。窓は内側から鍵をかけてあったはず。気にす...
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落とし物

あれは、大学2年の秋だった。夕方の講義を終えて家に帰る途中、何気なく路上に目をやると、小さなポーチが落ちているのに気づいた。黒いレザーで、小銭入れくらいの大きさ。落とし主がすぐに見つかるだろうと思い、そのまま通り過ぎようとしたが、なぜか気に...
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冷たい砂の音

学生時代、友人たちと海辺のキャンプに出かけた。夏の終わりで、観光客もほとんどいない静かな海だった。日が沈むと潮風が冷たく、波の音だけが響いていた。 夜、焚き火を囲みながら話していると、一人の友人が妙な話を始めた。 「この海岸、昔誰かが行方不...
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拾った手紙

社会人1年目の冬、私は毎日終電で帰るような忙しい日々を送っていた。ある日、駅のベンチに小さな黒い手帳が置かれているのを見つけた。薄暗い駅のホームに人影はなく、忘れ物のように見えた。 「誰かの落とし物かな?」 中を確認しようと手帳を開くと、最...
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逆さまの部屋

大学の友人から引越し祝いに誘われたのは、少し変わったアパートだった。築50年以上は経っていそうな古い建物で、階段の手すりは錆びつき、廊下の床もきしむ。その友人は家賃の安さに惹かれて入居を決めたと言う。 「ちょっと変な間取りだけど、慣れれば快...
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袋小路の足音

大学生の頃、バイトが終わるのがいつも深夜だった。駅から家まで歩いて帰る道の途中に、妙な袋小路があった。狭くて古びた路地で、奥には民家が数軒並んでいるだけ。道幅が狭すぎて車も通れないし、人通りもほとんどない。 ある晩、いつも通りその袋小路の前...
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消えた信号機

大学時代、夜更かししては深夜に散歩をするのが癖だった。何も考えずに歩き回るのが好きで、特に人気の少ない郊外の道路が気に入っていた。 その夜もいつものように散歩に出かけた。秋の冷たい風が吹き、街はすっかり静まり返っていた。いつものルートを歩き...
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透明な乗客

あれは私が都内のバス会社で運転手をしていた頃の話だ。夜間の最終便を担当することが多く、毎晩決まったルートを走っていた。深夜になると乗客も少なく、たいていは閑散とした車内で時間を持て余していた。 ある雨の夜、いつものようにバスを運転していると...
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消えるご近所さん

私が住んでいるアパートは、どこにでもあるような古い2階建てで、住人同士の関係も薄い。隣人がどんな人かもよく知らないし、顔を合わせても挨拶を交わす程度だった。 そんなある日、ポストに入っていたのは「住民アンケート」と題された薄い封筒だった。管...