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蛇の腹

大学時代の夏休み、友人たちと山奥の渓谷へキャンプに行ったときのことだ。そこは観光地化されておらず、人の手がほとんど入っていない原生林が広がる静かな場所だった。静かすぎて、ふとした瞬間に背筋がざわつくような空気を感じることもあったが、みんなで...
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遅れる通勤電車

僕は毎朝7時半に家を出て、8時ちょうどの電車に乗るのが日課だ。その日は寝坊して、一本遅い電車に乗った。いつもと違うリズムに少し気まずさを感じながら駅のホームに立っていると、電車が滑り込んできた。 電車はがらんとしていた。通勤ラッシュを過ぎた...
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空白の写真

祖父が亡くなったあと、遺品整理をしていたときのことだ。親戚一同が集まり、押し入れや箪笥の中から古いアルバムや日用品を引っ張り出していた。僕も手伝いながら、祖父の趣味だった写真のアルバムをめくっていた。 祖父の写真はどれも丁寧に整理されていて...
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帰り道の影

夜のバイトを終えて自転車を漕いでいた。道は田んぼに囲まれた細い一本道で、街灯がぽつぽつとあるだけ。風もなく静かで、聞こえるのはタイヤがアスファルトをこする音と、遠くで鳴くカエルの声だけだった。 その日は特に疲れていたから、早く帰ってシャワー...
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無音の足音

アルバイトで夜間警備の仕事をしていた。場所は廃業したデパートのビルで、昼間は事務所として一部が使われているが、夜になると人気がなくなる。 その夜、僕は一人で巡回をしていた。4階まで見回りを終え、エレベーターで5階に向かおうとしたが、なぜかド...
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呼ぶからね

田舎の古い家には、不思議なことがいくつもあった。特に、居間の片隅に置かれた三つの座布団が妙だった。誰もそこに座ることはないし、祖母に聞いても「あれはそのままにしておきなさい」と言うだけだった。 ある日、僕はふと座布団をじっと見つめていた。古...
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トンネルの中

夏休み、友人たちと心霊スポット巡りをすることになった。メンバーは僕、リョウ、アキラ、そしてナオコの4人。地元で有名な「旧トンネル」を目指し、夜中に車で向かった。 そのトンネルはすでに使われていない廃道で、薄暗い山道の奥にひっそりと口を開いて...
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つじつま

その道は「ねじれ道」と呼ばれていた。地元では有名な話で、名前の通り、どこか歪んでいる感覚を覚える道だった。 大学生のころ、僕は帰省するたびに車でその道を通っていた。近道だから使う人も多かったが、決まって「気味が悪い」と言う人が多い。地元の友...
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ほつれ

あの夜、俺はなぜか眠れなかった。蒸し暑い真夏の夜、風もないのにカーテンがひらひらと揺れている。窓は閉めたはずなのに。 テレビの砂嵐が部屋の中に響いている。寝る前に消したはずだったのに、いつの間にか点いていた。消そうとリモコンを手に取ったが、...
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見つけたよ

小学生のころ、僕たちの遊び場は学校の裏山だった。木々が生い茂り、ちょっとした冒険気分が味わえる場所で、授業が終わるとランドセルを放り投げ、夢中で遊びに行った。 その裏山の中腹には「見つけ石」と呼ばれる奇妙なものがあった。苔むした大きな石で、...