その手紙は、体育館の倉庫で見つかった。
古びた茶封筒に、滲んだインクで**「3年4組」とだけ書かれていた。
俺たちは好奇心から封筒を開けてみたが、中には便箋一枚だけ**が入っていた。
「私がここにいる理由を探して」
何も署名はなく、ただその一文だけが記されている。
体育館の倉庫には、昔から幽霊の噂があった。
「倉庫に閉じ込められたまま、卒業できなかった生徒がいる」
「夜になると、誰もいないはずの倉庫から足音が聞こえる」
俺たちは半信半疑だったが、あの手紙を見つけてからというもの、倉庫の様子がおかしくなった。
夜の見回りをしていた用務員が言うには――
「誰もいないのに、倉庫のドアが勝手に開くんだよ」
その週の金曜日、俺たちは放課後にもう一度倉庫を調べることにした。
古い体育用具が積み上げられた倉庫の奥、埃っぽい床を踏みしめながら進んでいく。
すると、誰かが座っていたような跡が残った古い机を見つけた。
机の上には、さらにもう一通の手紙が置かれていた。
「私がいなくなってから、もう20年」
その文字を見た瞬間――倉庫の電気が消えた。
「おい、なんだよこれ!」
友人が叫んだが、俺は声も出せず立ち尽くしていた。
暗闇の中、誰かの気配がする。
足音が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
そして――
「私のことを、思い出して」
暗闇の中、かすかにその声が聞こえた。
翌日、俺たちは職員室で20年前の卒業アルバムを探した。
すると、3年4組のクラス写真の中に――
一人だけ、顔が消えた生徒が写っていた。
名前もなく、クラスメイトたちがその生徒の方を避けるように立っている。
俺たちは、その生徒が倉庫に閉じ込められて死んだことを知った。
だが――奇妙なことに、その話を知っている先生は誰もいなかった。
「あんまりそういうこと、言わない方がいいよ」
先生たちは口を揃えてそう言った。
けれど、俺は知っている。
今でも倉庫に、手紙が一枚ずつ増えていることを。
最後に見つけた手紙には、こう書かれていた。
「次は、あなたの名前を残します」
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