ある日、僕は久しぶりに山へドライブに出かけた。都心から離れ、自然の中でリフレッシュすることを目的にしていたんだけど、実はもう一つ、ひそかな楽しみがあった。それは山頂近くの駐車場に車を停めて、そこで一息つくことだった。山の頂上付近にある駐車場は、車を降りるとすぐに眼下に広がる絶景が見渡せる。これこそが、山のドライブの醍醐味だといつも思っていた。
その日は特に天気が良く、気分も上々だった。山道を登りながら、車の窓を開けて風を感じる。道は思ったよりも空いていて、順調に山頂の駐車場にたどり着いた。
駐車場に車を停めた僕は、車を降りて、しばらく景色を眺めていた。青空が広がり、遠くの山々もくっきりと見える。風が気持ちよく、これは最高のリフレッシュになるだろうと思った。
しばらくすると、一台の車が駐車場に入ってきた。僕は特に気にせず、再び景色を楽しんでいたが、その車が僕の隣にぴったりと停まったことに気づいた。駐車場は広々としていて、ほかにも停める場所はいくらでもあるのに、なぜわざわざ隣に?
少し不思議に思いながらも、特に気にせずにいた。しかし、その車の窓がゆっくりと開き、運転席に座っていた男がこちらをじっと見つめているのが見えた。年配の男で、無表情のまま、ただ僕を見つめていた。
「何か用ですか?」と声をかけてみたが、男は何も答えず、ただ視線を外さない。気味が悪くなって、僕は車に戻ることにした。
車に乗り込んでエンジンをかけると、男の車も同時にエンジンをかけた。まるで僕の動きを真似するかのように、隣の車がじっと僕を監視しているように感じられた。
僕はその場を離れようと、ゆっくりと駐車場を出るために車を動かした。すると、男の車も同じように動き出し、僕を追いかけるようについてくる。
「なんだこれは?」と心臓が高鳴り始めた。逃げるようにして山道を下り始めたが、男の車はぴったりと後ろにつき、一定の距離を保ちながらついてくる。
焦りながらも、なんとか山を下りきり、町に戻ったところでようやく男の車は視界から消えた。息を整えながら、一体何が起こったのか理解できずにいた。
家に帰ってから、少し落ち着いて考えてみた。あの男は何者だったのか、なぜあんな風に僕を追いかけたのか。まるで山の中で何かが僕に取り憑いたかのような、得体の知れない不安が胸に残った。
その後、何度か山にドライブに出かけたが、あの駐車場には二度と近づかなかった。あの場所には、何か異質なものが潜んでいるような気がしてならなかったからだ。
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