かつては人々に愛されていた廃校の話です。
ただ、廃校になった理由が少し不気味でして。
噂によると、最後の卒業式の日にある事件が起きてしまったらしいんです。
詳細は隠されていて、町の人たちはその話題に触れたがらなかった。
でも、何年か前――夏の夜のことでした。
突然、廃校から校歌が聞こえると噂になったんです。
廃墟になったはずの校舎から、夕方になると古いスピーカーの音が響き渡る。
「ただの悪戯だろう」と最初は誰も気にしていませんでした。
けれど、その校歌が…どんどん変わっていったんです。
最初は普通のメロディだったはずなのに、次第に歌詞が歪んでいった。
「仲良くしよう」
「みんなで手をつなごう」
そこまでは普通だったんですが、その後に――
「帰れなくなるけれど」
「ここでずっと一緒にいよう」
そんな歌詞が追加されていた、と誰かが言い出しました。
興味を持った地元の若者たちが、廃校を探検しに行くようになりました。
でも、そのうちの何人かが、帰ってきた後に体調を崩してしまったんです。
共通していたのは、みんなが同じ夢を見ると言っていたことでした。
夢の中で、校庭に並ぶ子供たちの後ろ姿を見た。
みんなで校歌を歌っている。
でも、歌声が途中で変わり――最後に、誰かがこう囁くんです。
「お前のパートだろ?」と。
今では、廃校の周囲は立ち入り禁止になりました。
けれど、夏になると、誰もいないはずの校舎から――
古いスピーカーの音が、かすかに聞こえるんです。
聞いたことがありますか?
あの不気味な校歌を。
最後の歌詞だけが、未だに思い出せないんですよ。
でも、ひとつ覚えていることがあるんです。
「終わったのに、終わらない歌」と。
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