ミミズの大群

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大学の友人たちととある古い旅館に泊まりに行ったんです。
山奥のひなびた場所にあって、建物自体は趣があったんですが、どうも雰囲気が暗くてね。
「ここ、本当に営業してるのか?」なんて冗談を言いながら玄関をくぐりました。
受付には、誰もいませんでした

でも、カウンターの上にはが置かれていて、部屋番号が書かれた札がついていたんです。
「勝手に使えってことか?」
半分ふざけながら鍵を取って、部屋に向かいました。

部屋は古びていて、壁紙がところどころ剥がれていたけれど、特に不自然なところはありませんでした。
ただ、ふすまの向こうにもう一部屋があって――その部屋だけ、どうしてか妙に湿っているように感じたんです。

夜になると、外は雨が降り出しました。
窓の外を見ると、山の斜面から霧が立ち込めて、まるで何かが這い上がってくるようでした。

その時、友人の一人がふすまを開けたんです。
すると――

ミミズの大群が、その部屋の畳を覆っていたんですよ。

一瞬、目を疑いました。
ミミズが何百、何千匹と、湿った畳の上を蠢いているんです。
畳の隙間から湧き出しているのか、それとも外から入ってきたのか――それはわかりませんでした。

ただ、友人が「これ、やばい」と後ずさった時、気づいたんです。
ミミズたちが、私たちの方へ向かってくる。
まるで、何かを知っているかのように。

私は咄嗟にふすまを閉めました。
けれど、その瞬間――

耳元で何かが囁いたんです。
出られると思うな」と。

その声がどこから聞こえたのか、未だにわかりません。
ただ、その夜、ふすまの向こうから聞こえていたのは、ミミズが畳を這う音だけでした。
ずる、ずる、と。
あの音は、いまだに夢の中で聞こえてきます。

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