「うじうじ君」ってのは、私たちが子供の頃、誰も近づきたがらない同級生につけたあだ名なんです。
本名は誰も覚えていません。
ただ、あまりにも気味が悪い奴だったんですよ。
見た目は普通でした。
でも、いつも何かを掻きむしっていたんです。
首元だったり、腕だったり、足の裏だったり……。
特に雨の日になると、服の下で手を動かして、
**「じゅくじゅく」**と音を立てながら、皮膚を掻きむしる。
「何やってんだよ!」と誰かがからかうと、
彼はニヤニヤ笑ってこう言うんです。
「……中にいるんだよ」
最初は冗談だと思いました。
でもある日、彼の机の中に、白い虫の塊が見つかったんです。
ウジ虫が、消しゴムやノートの間から這い出ていました。
決定的だったのは、雨上がりの放課後のこと。
私たちが下校している時、彼が突然、
**「もう、いいだろう?」**とつぶやきながら服を脱ぎ始めたんです。
シャツを脱ぎ、ズボンを下ろし、最後に肌着まで――
その瞬間、私たちは絶句しました。
彼の身体中から、ウジ虫が湧き出していたんです。
腕の内側、背中、脚の付け根……
皮膚の下から、無数の白い虫が、次々に顔を出して、
地面にボタボタと落ちていく。
そして彼は、
満足そうに笑いながら、こう言いました。
「これで、少しは楽になるよ」
その日を境に、彼は学校に来なくなりました。
噂では、家ごと引っ越したとか、どこかの施設に入ったとか言われていましたが――
ただ、雨の日になると、
今でも誰かが言います。
「誰かの机の中に、虫が湧いている」
「掻きむしる音が聞こえる」
私も時々思うんです。
あのウジ虫たちは、本当に彼と一緒に消えたんだろうか?
それとも、まだどこかに「うじうじ君」が潜んでいて――
次の身体を探しているんじゃないかって。
考えただけで、腕の内側がムズムズしてきますよ。
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