しゃべる便器

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ある日、私は友人の家に招かれた。彼の家は古い和風の一軒家で、家中がどこかしら古めかしい雰囲気に包まれていた。友人はいつも、変わった話やくだらないことを持ち出してきては私を笑わせてくれるのだが、この日は特に面白いことがあるという。

「この家にはな、不思議なことが起こるんだよ」と友人は開口一番に言った。私は笑いながら「またかよ、どうせくだらない話だろう」と軽く流した。

「いやいや、今度のは本当に面白いぞ。聞いて驚くなよ」と友人は続けた。「実はな、この家のトイレに入ると、便器が話しかけてくるんだ」

私はその馬鹿げた話に吹き出してしまった。「何だそりゃ!便器が話しかけてくるなんて、そんなことあるわけないだろう!」

友人は真顔で頷いた。「いや、これが本当なんだよ。しかも、夜中に入ると便器が質問してくるんだ。答えないと、どうなるかわからないぞ」

あまりに馬鹿らしい話だったので、私は「じゃあ、試してみようか」とその話に乗ってみた。夜も更け、家の中が静まり返る頃、私は友人の案内でトイレに向かった。古びた扉を開けると、中には普通の和式便器がぽつんとあった。

「まあ、どうせ何も起こらないだろう」と思いながら、私は用を足した。しかし、用を足している最中に、何かが変だと感じ始めた。便器の下から、かすかに声が聞こえてくるのだ。

「そこの人間よ、答えを聞かせろ…」

その瞬間、私は目を見開いた。友人の言っていたことがまさか本当だったとは。声は続けて言った。

「さっさと答えないと、後悔するぞ…」

私は少し慌てたが、落ち着いて「何を聞きたいんだ?」と便器に話しかけた。すると、便器は静かにこう言った。

「何故、君はいつも便座を上げたままにしているんだ?」

その質問に、私は思わず笑ってしまった。便器がそんなくだらないことを聞いてくるとは思わなかったのだ。私は「それは…癖だよ」と答えた。すると、便器は「次回からちゃんと下げるように」と忠告して、再び黙った。

私は大笑いしながらトイレを出たが、友人は「だから言っただろ、あの便器は本当に話しかけてくるんだ」と大真面目に言う。私は笑いすぎて腹が痛くなり、友人と二人で大爆笑した。

その後、何度もそのトイレを使ったが、便器は二度と話しかけてこなかった。多分、私の答えに満足したのだろう。それ以来、便座をちゃんと下げる癖がついたのは、あの便器のおかげかもしれない。

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