林間学校

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林間学校は山奥の宿泊施設で行われた。二泊三日のプログラムで、昼間はハイキングや川遊び、夜はキャンプファイヤーや肝試しといった定番のイベントが目白押しだった。みんな楽しそうだったけど、俺は少しだけ気が乗らなかった。どうしてかはわからないけど、施設に着いた瞬間から、どこか居心地の悪さを感じていたんだ。

二日目の夜、肝試しが終わった後、消灯時間まで少し余裕があった。友人たちは部屋で騒いでいたけど、俺は一人で外の空気を吸いたくなって、施設の裏にある小さな広場に出た。星がきれいで、虫の声が心地よく響いていた。

しばらくベンチに座っていると、どこからか子供たちの笑い声が聞こえてきた。最初は、同じ林間学校に参加している他の班の子供たちだと思ったんだ。声はすぐ近くに聞こえるのに、姿は見えない。でも、気にせず星を眺めていた。

そのうち、笑い声がだんだんと近づいてきた。振り返ると、広場の端に小さな影が一つ、二つ……いや、もっとたくさん現れてきたんだ。暗闇の中から子供たちが次々と出てきて、俺の周りを囲むように集まってきた。

彼らはみんな真っ白な服を着ていて、顔がぼんやりしていた。表情があるような、ないような、不思議な感じだった。彼らは何も話さず、ただじっと俺を見ているだけだったけど、その視線が体に刺さるような感覚だった。

「何だよ、お前ら……」

思わずそう呟いた瞬間、彼らは一斉に笑い出した。高く、甲高い笑い声が夜空に響いて、広場全体を満たした。俺は背筋が凍りついて、立ち上がることもできなかった。ただ、その場で固まるしかなかったんだ。

気がついたときには、誰もいなくなっていた。笑い声も影も消えて、広場には俺一人だけが取り残されていた。慌てて部屋に戻り、友人たちにその話をしたけど、みんな笑って「疲れてたんじゃないか?」と言うだけだった。

でも、翌朝になって気づいたんだ。俺が広場で感じた異様な感覚を、他にも感じたやつがいたらしい。別の班の子が、「夜中に知らない子供たちが部屋の窓の外に立ってた」と怯えた声で話していたんだ。

あの子供たちが何だったのか、今でもわからない。でも、あの広場に出たことが間違いだったんじゃないかと思うことがある。もし、彼らがもう少し近づいてきていたら――考えるだけで、ぞっとする。

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