当時、僕の家の裏には小さな神社がありました。町の人たちからもあまり注目されていない場所で、苔むした石段と手入れのされていない木々に囲まれていて、少し陰気な雰囲気が漂っていました。でも僕にとっては格好の遊び場でした。
ある日、学校帰りにその神社に立ち寄ったんです。ふと見上げると、石段の途中に何かが落ちているのが見えました。それは、白い紙のようなものがくしゃくしゃになったものでした。拾い上げてみると、薄汚れていましたが、文字らしきものが書いてありました。ただし、その文字がまったく読めない。漢字でもひらがなでもない、奇妙な記号のようでした。
面白いと思って、家に持ち帰ったんです。でもその夜、その紙のことを思い出して引き出しを開けてみると、紙が無くなっていました。家族に聞いても誰も知らないと言います。
その数日後、また神社に行ってみると、同じような紙が今度は鳥居の下に落ちていました。拾い上げると、前の紙と同じような記号が書かれていました。その時、急に背中に冷たい風が吹いて、誰かに見られているような気配を感じました。振り向いても誰もいない。それなのに、自分の影が鳥居の向こうに伸びているのが見えました。
怖くなってその場を離れ、それ以来その神社には近づかなくなりました。でも時々、あの記号が何だったのか気になります。あの紙が今でもどこかに存在しているのか、それともただの子供の空想だったのか、今でも答えは出ません。
コメント