団子状の子供達

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あれは、春が近づく頃の少し暖かい日でしたね。どこに行くともなく、ぶらりと散歩していた私達が、ふと足を止めたのは、公園の端にある古びた遊具のそばでした。木々が少しずつ芽吹き始めている中、その遊具だけが不釣り合いに古び、まるで時間から取り残されたように見えました。

その遊具の下で、何かが蠢いているのに気づいたのは、あなたでした。「あれ、なんだ?」と指差す先には、子供たちが団子のように丸まっているように見えました。最初は笑いながら、「なんだ、遊んでるだけか」と軽く流したんです。

でも、近づくにつれて、違和感が大きくなっていきました。彼らは、ただくっついているのではありませんでした。まるで体が絡み合い、互いに結びつくように寄り添い合っていたんです。最初は何かの悪ふざけかと思いました。でも、よく見ると――それは、ただの子供たちではなかった。

一人ひとりの顔が、妙に歪んでいました。目は閉じているのに、口元は引きつったように笑っていて、まるで無理やり笑顔を作らされているかのようでした。そして、その異様な姿勢の中で、何か低い声のようなものが聞こえたんです。最初は風の音かと思いましたが、確かにそれは声でした。子供たちが、全員で何かを呟いているような――しかし、それが何を言っているのかは分かりませんでした。

恐怖を感じた私達は、そっとその場を離れようとしました。ですが、一歩下がったとき、突然その「団子」の中の一人がこちらを向いたんです。目は閉じたままで、しかし、明らかにこちらを「見ている」と分かる感覚でした。

そして、また別の子供がゆっくりとこちらに顔を向けました。一人、また一人。目を閉じたまま、笑顔のままで。

私は背筋が凍りつき、あなたに「行こう」と声をかけました。その声が聞こえたのか、彼らは一斉に何かを呟き始めました。そのとき、初めて言葉が聞き取れました。

「まだ……ひとり足りない」

その言葉を最後に私達は全速力で公園を飛び出しました。振り返る勇気はありませんでしたが、背中に感じたのは、あの「団子」の全員がこちらを見送っているような視線でした。

あれは一体何だったのでしょうか。ただ遊んでいるだけに見えたあの光景の裏に、何が隠されていたのか。そして、なぜ「ひとり足りない」と言ったのか――その答えを、私は知る勇気もありません。

春の日差しが眩しかったはずのあの日が、今では暗い影を落とす記憶となっています。あの子供たちの団子状の姿と、歪んだ笑顔が、瞼の裏に焼きついて離れないのです。

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