それは夏の真っ盛り、まるで空が焼けるような日差しの下での出来事でした。湿気を含んだ空気が肌にまとわりつき、影もほとんど涼しく感じないような昼下がりでしたね。私達はキャンプの帰り道で、ふと車を止めて林の中に入ったんです。ほんの軽い探検気分でした。何の気なしに寄り道したあの林で、あんなものを見ることになるとは思いもしませんでした。
最初にそれを見つけたのは、あなたでしたね。小川のそばで立ち尽くしているあなたに気づき、私達も足を止めました。その視線の先にあったのは、血だらけの「何か」でした。
最初、それが何なのか、私には全く分かりませんでした。木漏れ日のせいか、血の赤が妙に鮮やかで、現実感がないように思えたのです。近づいてみると、それが動物の死体だということに気づきました。鹿でしょうか、それとも犬でしょうか。全身が傷だらけで、皮膚のほとんどが剥がされていました。奇妙だったのは、その死体がまるで「置かれた」かのように整然と地面に横たわっていたことです。あたかも誰かが意図的にその場所に配置したような――そんな印象を受けました。
「これ、やばいんじゃないか?」
誰かが呟き、私達はその場に釘付けになりました。暑さのせいで鼻を突くような臭いはしなかったものの、血の匂いがどこからか漂ってきた気がしました。視線を外せないまま、私達は無言でその場に立ち尽くしていました。
「誰かが……やったのか?」
誰かがそう言った瞬間、周囲の空気が変わった気がしました。妙に静かだった林に、突然「カサッ」と何かが動く音が響いたのです。全員がその音のした方向を見ましたが、そこには何もいませんでした。それでも、どこかから私達を見られているような感覚が、背中を刺すように迫ってきたのです。
「帰ろう、ここやばい」
誰かがそう言い、私達は急いでその場を離れました。後ろを振り返らずに林を抜け、車に戻ったとき、全員が汗と息でぐったりとしていました。
帰りの車内では誰も話そうとしませんでした。でも、全員が同じ疑問を抱えていたはずです。あの血だらけの死体は一体なんだったのか。あの場所にあんな形で残されていた理由は何だったのか。そして――あの林の中に、他に何がいたのか。
あれ以来、夏の青空を見るたびに、私はあの赤と黒のコントラストを思い出します。血の臭いと、木々の間で何かが私達を見つめていた感覚を。あの日の記憶は、真夏の昼の暑さとともに、今でも私を締め付けます。
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