青空の下の影

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小学生の頃、僕の家の近くには大きな空き地がありました。草が生い茂っていて、風が吹くたびに波のように揺れるその空き地は、僕たちの秘密基地のような場所でした。夏休みの午後、僕と友達数人は、学校が終わってからそこで虫取りをしたり、かくれんぼをして遊んでいました。

その日は特に天気が良く、雲一つない青空が広がっていました。蝉の声が頭上から降り注ぐ中、僕たちは空き地で鬼ごっこを始めました。遊びに夢中になっていた僕たちは、時間が経つのも忘れて走り回っていました。

その時でした。

僕が空き地の奥へ走り込んだ時、地面にぽつんと奇妙な「影」が見えたのです。それは、木の影でも僕の影でもない、人のような形をした黒い影でした。けれど、その影には何かおかしな点がありました。上を見上げても、そこには誰もいなかったのです。影だけが、そこにあった。

「なんだ、これ……?」

僕が足を止めてその影をじっと見つめていると、他の友達も気づいて寄ってきました。「誰かいるのか?」と辺りを見回しても、僕たち以外には誰もいません。影は、まるで僕たちの視線に気づいたかのように、じわりと動き始めました。

それは、まるで人が立ち上がるような仕草を見せました。地面から立ち上がり、次第に輪郭がはっきりしてきたかと思うと、影が空中に浮かび上がりました。その瞬間、僕たちは息を呑みました。黒い影は、人の形をしていましたが、顔がなく、まるで切り抜かれた穴のように見えたのです。

「逃げろ!」

誰が言ったのかも分からないほど早く、僕たちは一斉に駆け出しました。影が追いかけてきているかどうかを確かめる余裕もなく、ただ全力で走りました。空き地を抜けて家にたどり着くと、僕たちはその場でへたり込んで、ようやく振り返りました。

影は、もういませんでした。

その日以来、僕たちはあの空き地に近づくことはなくなりました。しばらくしてから空き地は工事で埋め立てられ、今では大きなマンションが建っています。

青空の下で見た、あの影。あれは何だったのか、今でも分かりません。ただ、あの時の青い空の美しさが、あの黒い影の恐ろしさをより際立たせていたように思います。そして、時折思い出すのです――あの影は僕たちを追ってきたのではなく、ただ僕たちをじっと見ていたのではないか、と。

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