踏切の真っ赤な行列

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夕方、どこかぼんやりした気分で、近所の踏切の前に立っていました。特に急いでいるわけでもなく、電車が通り過ぎるのを待ちながら、夕焼けに染まる空を眺めていたんです。

そのとき、警報機が鳴り、遮断機がゆっくりと下がりました。普通のことだと思っていたのに、ふと視界の端に違和感を覚えました。線路の向こう側から、真っ赤な服を着た人たちが次々と踏切に向かって歩いてくるのが見えたんです。

最初は一人だけでしたが、その後も続々と現れ、まるで行列のようでした。赤い服はどれも同じデザインで、顔や年齢、性別もはっきりと分からないほどぼんやりとした人影でした。人数は数えきれないほど多く、列がどんどん長くなっていくようでした。

驚いたのは、その人たちが遮断機の下をくぐり、線路の真ん中で止まったことです。電車が来るのに危ないじゃないか、と思いましたが、誰も何も言わず、ただそこに立ち尽くしているだけでした。そして、その瞬間気づいたんです。全員の顔がこちらを向いていることに。

無表情なその顔は、人間らしい暖かさや感情が一切なく、ただじっと私を見ているだけでした。足がすくんで動けず、冷たい汗が背中を伝いました。警報音が耳を刺すように響く中、遠くから電車の音が近づいてくるのが分かりました。

その瞬間、列の先頭にいた人影が一斉に線路に倒れ込み、次々と消えていくように見えました。視界が真っ赤な色と電車のヘッドライトに覆われ、思わず目をつむった瞬間、耳に響いていた警報音がぴたりと止まりました。

恐る恐る目を開けると、線路も踏切も、何事もなかったかのように静まり返っていました。遮断機が上がり、普通に自転車や車が通っていましたが、さっきの行列がいた痕跡はどこにもありませんでした。

家に帰ってその話を友人にしたとき、私の顔が蒼白だったのも無理はありません。あの真っ赤な行列が何だったのか、なぜあの日あの場所で見たのか、いまだに分からないままです。ただ、あの踏切を通るたびに、背後から視線を感じるような気がしてなりません。

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