首の長い人

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友人と二人で遅くまで学校に残っていた日でした。部活が終わった後、ちょっと話し込んでしまい、気づけばあたりは暗くなっていました。学校から家までは歩いて15分ほどの距離で、いつもの帰り道を、友人と一緒に歩いていたんです。

その日は妙に静かでした。普段なら犬の鳴き声や自転車のベルの音が聞こえるはずなのに、周囲が異様に無音だったのを覚えています。友人と話していても、声が吸い込まれるように聞こえにくくて、なんとなく気味が悪いと感じていました。

住宅街の細い道を抜けて少し広い通りに出たところで、道の先に一人の人影が見えたんです。街灯の下に立っているその人は、背が高くて細身。黒いコートを着ていて、顔は下を向いていました。最初はただの通行人だと思い、特に気にしていなかったんですが、近づくにつれて何かおかしいと感じ始めました。

その人、異様に首が長かったんです。遠目には気づきませんでしたが、顔の位置が明らかに高すぎる。肩のあたりから首が不自然に伸びていて、しかも、首が微妙にゆらゆら揺れているように見えました。友人もそれに気づいたのか、急に足を止めて「……おかしい」と小声で言いました。

私たちはすぐに引き返すべきだったんです。でも、目が離せなくて、なぜかその人の方を見続けてしまいました。そのとき、その人がふっと顔を上げたんです。目が合いました。顔は驚くほど普通だったんですが、その表情が何とも言えない不気味さを放っていて、何よりもその長い首と組み合わさることで異質さが際立っていました。

すると、その人がこちらに向かって歩き始めました。足元はほとんど見えず、まるで滑るような動きでした。恐怖で体が固まってしまい、友人とどうすることもできずに立ち尽くしていると、耳元で「逃げろ」というかすれた声がしました。声の主が誰だったのかは分かりません。でも、その声に反射的に背を向け、友人と一緒に全力で走り出しました。

どれだけ走ったのか覚えていません。気づけば近所の公園のベンチに座っていて、二人とも息を切らしていました。振り返っても、あの首の長い人は追ってきていませんでした。けれど、あの不気味な視線と、ゆらゆらと揺れる首の動きは、今でも頭から離れません。

その後、あの通りを通ることはなくなりました。あれが人間だったのか、それとも何か別の存在だったのか、いまだに分かりません。でも、二人とも同じものを見たのは確かです。あの日の出来事が、現実だったのかどうかさえ疑いたくなりますが、友人も同じ記憶を持っていると思うと、どうにも説明がつきませんね。

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