その日は休日でしたが、私は友人と一緒に呼び出され、理由も曖昧なまま学校へ向かいました。着いた時、校舎はひっそりしていて、蝉の声だけがやけに大きく響いていました。正門を抜けると、玄関に立つ用務員さんが私たちをじっと見つめていました。その視線が妙に冷たく感じられたのを覚えています。
案内されたのは、普段使われていない旧校舎の教室でした。そこには、先生が一人、机に座って待っていました。私たちを見るなり、「入って」と無表情で促し、何の前置きもなく話し始めました。
「最近、学校の備品がなくなることが多くてね。何か知らないか?」
先生の声は低く、ただの確認というよりも、私たちを疑っているようでした。もちろん、私も友人も何も知らず、首を振るばかりでしたが、先生は納得していない様子でした。
その後、先生が妙なことを言い出したんです。「昨晩、校内を見回っていたら、旧校舎の中で物音がしたんだ。でも、そこに誰もいるはずがない。」さらに、「何か妙なものを見た気がする」とも言いました。その話を聞いた時、友人と目を合わせ、何とも言えない寒気を感じました。
その教室を出た後、友人がぽつりと呟いたんです。「あの先生、誰かに似てる気がする……でも、誰だっけ?」その言葉が妙に引っかかりました。私もその先生に見覚えがあるような気がしていましたが、結局思い出せないままでした。
後日、学校で噂を聞いたんです。旧校舎で物音がするという話は以前からあったそうですが、そこに現れる人影が、以前亡くなった元教師にそっくりだという話もありました。あの日、私たちを呼び出したあの先生――本当にあれは、今の教師だったのでしょうか?
その出来事以来、旧校舎には誰も近づかなくなり、備品がなくなることもなくなったそうです。ただ、時折、夜の学校から聞こえる物音だけは止まなかったと聞いています。
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