夜のトイレ

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小学校2年生の頃、家族で祖父母の家に泊まりに行ったときのことです。祖父母の家は、古い日本家屋で、廊下が長く、夜になると薄暗くて少し怖い雰囲気がありました。その日は親戚も集まって、夕方まで賑やかに過ごしましたが、夜になると急に静まり返ります。

眠りについたのはたしか9時頃。畳の間に布団を敷いて、家族全員で寝ていました。でも、夜中に目が覚めてしまったんです。お腹が冷えて、トイレに行きたくなってしまった。

子供のころ、夜のトイレは怖くて仕方ありませんでした。しかも祖父母の家のトイレは家の端にあって、薄暗い廊下を歩かなければなりません。最初は我慢しようと思ったんですが、どうしても限界が来て、意を決して布団から抜け出しました。

廊下に出ると、外から差し込む月明かりだけが頼りでした。壁に飾られた古い家族写真や、薄暗い天井が怖さを増幅させます。何度も後ろを振り返りながら、ようやくトイレにたどり着きました。

用を足して、ほっとしたのもつかの間。トイレを出た瞬間、廊下の奥から何かが動いた気がしました。振り返ると、廊下の突き当たりに、小さな影が立っていたんです。

子供が立っているように見えました。でも、その時は不思議と「誰かいる」という感じがせず、ただ「何かだ」と思いました。髪がぼさぼさで、白っぽい服を着ていて、顔は薄暗くてよく見えませんでした。

驚いて声を上げそうになりましたが、声が出ない。それどころか、足がすくんで動けなくなりました。その影はただじっと立っていて、こちらを見ているようでした。でも、「目がある」という感覚はなく、ただ「視線を感じる」だけだったのを覚えています。

次に気づいたときには、布団の中に戻っていました。どうやって戻ったのか全く記憶がありません。ただ、布団をかぶりながら心臓がバクバクと鳴る音だけが耳に響いていました。

翌朝、大人たちにその話をしても、誰も信じてくれませんでした。「夜中に怖い夢でも見たんだろう」と笑われただけです。でも、あのときの感覚はあまりにも生々しく、夢だったとは思えません。

祖母にその話をしたときだけ、少しだけ困った顔をしていました。何かを言いかけたようでしたが、結局何も言わず、「もうそんな時間に起き出さないようにね」とだけ言われました。

それ以来、祖父母の家に泊まりに行くたびに、あの廊下を思い出してしまいます。昼間に歩いても、あの影がまた現れそうな気がして、今でも少し怖いんです。

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