その日、俺は友達のケンジと飲みに行った帰り道、急に腹が痛くなってトイレを探し始めた。夜中の街は静かで、人気も少なく、どこか不気味な感じが漂っていた。
「ちょっと、コンビニ探そうぜ」とケンジに言ったが、こんな時に限って見つからない。仕方なく、俺たちは近くの小道に入り、適当な場所を探し始めた。すると、古びたビルが目に入った。
「ここにトイレあるかもな」とケンジが言い出し、俺たちはそのビルに入ることにした。中は薄暗く、電気がチカチカと不気味に点滅していた。ビルの中に入ると、妙に静かで、風の音すら聞こえない。
「これ、ホントにトイレあんのか?」俺は不安になりながらも、奥に進んでみた。すると、「トイレ」という案内板を見つけた。「お、ラッキー」と思ってその方向に進んだんだが、なんか変な感じがする。
トイレのドアは古くて、ガタガタと音を立てて開いた。中に入ると、便器は一つだけで、壁にはびっしりと何か書かれていた。「これは何だ…?」と思いながらも、急いで用を足すことにした。
その時だ。急にドアがバタンと閉まった。「おい、ケンジ、何やってんだよ!」俺は慌てて叫んだが、返事がない。ドアを開けようとしたが、何かがドアを押さえつけているようで、びくともしない。
「おい、冗談だろ?」俺はますます焦り始めた。すると、壁に書かれていた文字が、少しずつ浮かび上がってきた。「見える?聞こえる?私、ここにいるよ」その文字が、壁一面にびっしりと浮かび上がり、まるで何かがこちらを見ているかのように感じた。
「うわっ、何だこれ!?」俺は必死にドアを叩き、なんとか外に出ようとしたが、やっぱり開かない。心臓がバクバクと音を立て、冷や汗が流れた。その時、便器の方からゴボゴボと音が聞こえ、何かが出てくる気配がした。
「やめてくれ…」俺は目を閉じて叫んだ。すると、急にドアがバンと開いた。振り返ると、そこにはケンジが立っていた。「お前、大丈夫か?」と心配そうに聞いてきたが、俺は息を切らしながら「お前が閉じ込めたんじゃないのか?」と聞き返した。
ケンジは首を振り、「いや、俺もドアが開かなくて焦ったんだよ」と答えた。その言葉を聞いて、俺たちは二人でゾッとした。
「もうここには近づかない方がいいな」俺たちは顔を見合わせ、急いでそのビルを後にした。後から考えれば、あのトイレに入ったこと自体が間違いだったのかもしれない。
でも、家に帰ってリュックを開けたら、中にトイレの案内板が入っていた。俺はそれを見て、再び震え上がった。あのトイレは、俺たちを逃がしてくれたのか、それともまだ何かを望んでいるのか…真相はわからないままだ。
コメント