つじつま

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その道は「ねじれ道」と呼ばれていた。地元では有名な話で、名前の通り、どこか歪んでいる感覚を覚える道だった。

大学生のころ、僕は帰省するたびに車でその道を通っていた。近道だから使う人も多かったが、決まって「気味が悪い」と言う人が多い。地元の友人たちも口をそろえて「夜は絶対に通るな」と忠告してきた。

その日も、夜になってからねじれ道を通ることになった。母親から「帰る前に実家に寄って」と言われて、寄り道をして遅くなったのだ。真夜中のねじれ道は、不気味なくらい静かだった。車のヘッドライトが道路を照らし、細い道の両側にある木々の影がゆらゆらと揺れている。

道の途中で、車のライトが人影を捉えた。誰かが道端に立っている。深夜に人なんて珍しい。歩行者だろうか。

近づくと、その影は人間のようで、人間じゃないと分かった。妙に長い手足を持ち、体がくねくねと揺れている。風がないのに揺れているのが異常だった。

僕は恐怖に駆られ、無意識にアクセルを踏んでその場を離れた。心臓はバクバクと音を立て、冷や汗が背中を流れる。あれは何だったんだろう?

少し安心したのも束の間、視界の端にまた影が現れた。今度は道の反対側だ。同じようにくねくねと揺れる細長い影がこちらを見ている。いや、「見ている」というより、そこにいるだけでこちらを捉えているような感覚だった。

アクセルを踏み込んだ。気がつけば道はどんどん狭くなり、地図にないような曲がり角が増えていた。おかしい。ねじれ道は短いはずだ。それなのに、いつまでも出口が見えない。

ふと気がつくと、フロントガラスの外に無数の影が並んでいた。どれもくねくねと揺れながら、道路を塞いでいる。

車を止めるしかなかった。エンジンを切ると、世界が急に静まり返った。影たちはゆっくりと近づいてくる。音はない。ただ、その動きが「何かを待っている」ようで怖かった。

そして、ある瞬間、影たちは一斉に消えた。

気がつくと僕は朝日が差し込む普通の道に立っていた。車もない。家に帰ると、母が驚いた顔をして言った。

「昨日、帰ってこないから心配してたのよ。電話してもつながらないし。」

時計を見ると、ちょうど24時間が経っていた。何が起きたのか、記憶が曖昧だ。ただ、思い出すたびに頭がズキズキと痛む。

それ以来、ねじれ道を通る人が激減したらしい。でも、誰も理由を聞かない。たまに夜道を走る車があるが、二度と出てこないという話も聞いた。

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