深夜のカーテン

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あの夜のことは、今でも鮮明に覚えている。大学から帰ってきたのは夜の11時を回った頃だった。疲れ切っていて、ただ眠りたい。それだけだった。

部屋に入ると、窓のカーテンが少しだけ開いているのに気がついた。窓は内側から鍵をかけてあったはず。気にするのも面倒で、カーテンを閉じ、シャワーを浴びることにした。

シャワーを浴び終わり、部屋に戻るとまたカーテンがわずかに開いている。風で揺れたのか?と思いながらも、もう一度しっかり閉めて、布団に潜り込んだ。

その時、窓の外から微かに「コンコン」という音がした。誰かが窓を叩いている。3階の部屋だ。こんな場所に人がいるはずがない。

怖くて布団を深くかぶり、音が止むのを待った。けれども、音は繰り返し続いた。そして、それが耳元で聞こえ始めた。

「開けて……」

息が止まりそうだった。背中に冷たい汗が流れる。布団の中で震えながら、音が遠ざかるのを待った。

朝、窓を確認すると、カーテンがまた開いていた。そして窓ガラスには、薄く手形が付いていた。内側からだ。

部屋には鍵をかけている。侵入者がいるはずがない。

その夜、どうしても気になり、窓の外をカーテン越しに覗いてみることにした。恐る恐るカーテンを少し開けた瞬間、目が合った。

窓の向こうに、顔があった。

それは私自身だった。ただし、向こう側の私は無表情で、窓越しにじっとこちらを見つめている。

次の日、部屋を出て実家に戻ったが、夜になると時折、カーテンが揺れる音が聞こえる気がする。そしてその音の後、ガラスに映る自分の姿がどこか「違う」気がしてならない。

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