その町には、古びた公園があった。錆びついたブランコや壊れかけた滑り台が並ぶその場所は、かつて子供たちで賑わっていたというが、今ではほとんど誰も訪れない。私は、その公園が持つ不気味な空気に興味を持ち、ある日その場所を訪れてみた。
昼間の公園は、何の変哲もないただの荒れた場所に過ぎなかった。しかし、夕方になると、どこからともなく子供たちが現れた。彼らは何も言わず、ただ公園の真ん中に集まり、じっと私を見つめていた。普通の子供に見えたが、その視線には何か異様なものがあった。
「ねえ、お兄ちゃん。遊ぼうよ」一人の女の子がにこやかに声をかけてきた。その笑顔は可愛らしいが、どこか冷たさを感じた。私は少し戸惑いながらも、「いいよ」と答えた。
すると、他の子供たちも笑顔になり、私を取り囲むようにして遊び始めた。鬼ごっこやかくれんぼ、普通の遊びだったが、どれもどこか不自然で、私は次第に不安を感じ始めた。
そのうち、子供たちは一人ずつ消えていった。まるで最初からそこにいなかったかのように、誰もその場にいなくなった。そして、最後に残ったのは、最初に声をかけてきた女の子だけだった。
「みんな、帰っちゃったみたいだね」彼女はそう言って微笑んだが、その笑顔には何か底知れない冷たさがあった。
「お兄ちゃん、秘密教えてあげる」彼女は私の耳元で囁いた。「ここに来た人、みんなもう帰れないんだよ。だって、私たちが遊んであげるんだから」
私はその言葉に凍りついた。ふと気づくと、周りの景色が変わっていた。公園は暗闇に包まれ、子供たちの笑い声が四方八方から聞こえてきた。その笑い声は、楽しそうに聞こえるが、同時に嘲笑のようでもあった。
「もう、帰れないんだよ」女の子の声が再び響いた。「だって、ここは私たちの遊び場だから。お兄ちゃんも、ずっと一緒に遊ぼうね」
その瞬間、私は背筋が凍る思いをした。周りを見渡すと、子供たちの姿が再び現れていたが、その顔はどれも無表情で、目だけが異様に輝いていた。
「もう帰れないんだ」頭の中でその言葉がぐるぐると回り続け、気がつけば私は全速力でその場を逃げ出していた。振り返ることなく、ただ公園から遠ざかることだけを考えた。
家に戻った後も、あの子供たちの声が耳に残って離れなかった。私はもう二度とあの公園には近づかないと決めた。しかし、夜になると、時折子供たちの笑い声が窓の外から聞こえてくるような気がする。彼らはまだ、私を遊びに誘おうとしているのかもしれない。
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