見守っているよ

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Bさんが住む町内では、自治会による「見守り活動」が活発だった。高齢者や子どもたちの安全を守るため、住民が交代で町内をパトロールし、異常がないかを確認する取り組みだ。

ある夜、Bさんは自治会の当番で見守り活動をすることになった。その日は特に何事もなく、予定の1時間を終え、帰宅しようとしていた時のことだった。

町内の細い路地で、道の真ん中に小さな袋が落ちているのを見つけた。白い布に包まれた袋は、握り拳ほどの大きさで、紐でしっかりと口が結ばれている。不審物かもしれないと考えたBさんは、その袋を拾い上げた。

袋は思ったより軽く、中身が何なのか見当もつかない。自治会の活動報告のために写真を撮っておこうと、スマートフォンを取り出し、袋を撮影した。

その瞬間、Bさんは妙な違和感を覚えた。

画面に映った袋の影が、動いている。袋そのものは手の中にしっかりと収まっているのに、スマートフォン越しに見ると、袋の影が微妙に震えているのだ。まるで、何かがその中で蠢いているかのように。

「気のせいだ」と自分に言い聞かせながら、袋をポケットに入れ、その場を後にした。

家に戻ったBさんは、袋のことがどうしても気になり、紐を解いて中身を確認することにした。中から出てきたのは、小さな紙切れだった。古びた紙には、かすれた文字でこう書かれていた。

「見つけたら、そこに置いておくこと」

Bさんは寒気を覚え、すぐに袋を元に戻してゴミ箱に捨てた。その夜、袋のことは忘れようと早めに布団に入ったが、どうにも眠れない。

深夜、窓の外でカサカサという音が聞こえた。Bさんの家は二階建ての一軒家で、音のする方向は庭に面している。窓をそっと開け、外を覗いたBさんは息を飲んだ。

庭の真ん中に、あの袋があった。確かにゴミ箱に捨てたはずの袋が、何事もなかったかのようにそこに置かれている。


翌朝、Bさんは袋を持って自治会の会長に相談した。すると、会長は顔を青ざめ、低い声でこう言った。

「その袋は触っちゃいけないものだ。前にも見つかったことがあるが、置き去りにしておくのがルールなんだ」

詳しい理由を尋ねても、会長はそれ以上何も教えてくれなかった。ただ、Bさんが拾った場所に袋を戻し、誰にも触れさせないようにするよう言われた。

Bさんは言われた通り、袋を元の路地に戻した。しかし、それ以降も、袋は時折別の場所で見つかることがあるという。

見守り活動が何を「見守っている」のか、Bさんには今も分からないままだ。

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