枯れた子供

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あの時のことは、今でも鮮明に思い出す。あれは夏の終わり、暑さが少し和らいだ日だった。夕方、僕は近くの公園を散歩していた。いつものコースで、そこは木々が多く、昼間でも涼しい風が吹き抜けていて、散歩には最適な場所だった。

その日は、ふと違和感を覚えた。公園の奥にある古いブランコが揺れていたのだ。風が吹いていたわけでもない。誰かが遊んでいるのかと思い、近づいてみた。

そこにいたのは、小さな子供だった。だが、その姿を見た瞬間、全身に寒気が走った。

その子供は、まるで「枯れている」ようだった。顔色は異常にくすんでいて、肌は乾いた葉のようにざらざらとしている。目は虚ろで、焦点が合っていなかった。髪は乾燥しきってバサバサで、何よりも、その子供は笑っていた。無表情のまま、口だけがぎこちなく笑みを浮かべていたんだ。

何かおかしいと思ったが、目が離せなかった。子供はブランコに座ったまま、じっとこちらを見ていた。いや、正確には「見ているように見えた」。彼の目には何の感情も宿っていなかったからだ。

「どうしたんだ…?」そう声をかけようとしたが、言葉が喉に詰まった。胸の奥が締め付けられるような、妙な圧迫感を感じたんだ。

その子供は、何も言わずにただ僕を見つめていたが、次の瞬間、ゆっくりとブランコから降りて立ち上がった。そして、無言のまま僕の方へ歩み寄ってきた。歩くたびに、まるで枯れた木の枝が擦れ合うような音が、彼の体から聞こえていた。

近づくにつれ、その子供が異様なほど細く、痩せこけているのが分かった。手足はまるで枯れ木の枝のように細く、顔には無数の皺が刻まれていた。それでも、彼は僕に近づいてきた。

恐怖が込み上げ、僕は後ずさりした。しかし、その子供は僕の目の前で立ち止まり、上を見上げて「何か」を言いたげに口を動かした。だが、声は出ていなかった。ただ、乾いた口元が動くだけだった。

その瞬間、僕は走り出した。恐怖に駆られ、振り返ることなく公園を飛び出した。心臓が激しく鼓動し、頭の中は真っ白だった。

家に戻ってからも、あの「枯れた子供」の姿が頭から離れなかった。彼は一体何者だったのか? なぜ、あんな姿で公園にいたのか?

それ以来、僕はその公園には近づけなくなった。あの枯れた子供が、再び僕の前に現れるのではないかという恐怖が、今でも心の奥に残っている。あの時、彼は何を言いたかったのか、そして、もしあの場に留まっていたら…何が起きていたのかを考えると、背筋が凍る思いだ。

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