俺たち、夜中の学校で肝試しをすることになった。まぁ、普通の夏の思い出ってやつだろ?昼間はなんてことない教室も、夜になるとガラッと雰囲気が変わる。しかも、舞台は旧校舎。もう何十年も使われてないんだぜ?いい感じにボロボロで、いかにも何か出そうな雰囲気がプンプンしてる。
「お前、マジで行くの?」タケルが俺にそう聞いてくる。ビビってんのか?なんて思いながら、「もちろんだろ」と余裕ぶって答えたけど、正直俺も少し怖かった。
学校の門をくぐって、旧校舎へ向かう。月明かりだけが頼りで、足元がやたら暗い。いつもなら「うるせーよ!」って言いたくなるほどの蝉の鳴き声も、今は妙に不気味だ。
「おい、見ろよ、あれ。」ユウキが指さす方向に目をやると、窓から何かがこちらを見てる気がした。なんだよ、あれは…。でも、気のせいだって自分に言い聞かせた。そんなの、ただの影だろう。
中に入ると、空気が一気に冷たくなった。いや、冷たいっていうか、湿っぽくて、なんか変な匂いがするんだよ。腐った木の匂い?いや、それだけじゃない。なんか、もっと異様な感じがした。
俺たちは黙々と廊下を進んだ。足音がやたらと響いて、心臓がバクバクしてきた。いやいや、こんなのただの肝試しだって自分に言い聞かせたけど、その言葉がどんどん軽くなっていく。
「おい、やっぱり帰ろうぜ…」タケルが震え声で言ったけど、俺は「冗談だろ?」と笑い飛ばそうとした。そのとき、ガタン!って音がしたんだ。まるで、誰かが机をひっくり返したみたいな音。
「お、おい、何だよ今の音…」ユウキが言う。俺たちは動けなくなった。まさか、誰かいるのか?
その時、廊下の奥から白い影がヌッと現れた。ゆっくりと、俺たちの方に向かってくる。マジで、心臓止まるかと思ったよ。顔がないんだ。顔が、ないんだよ!
「逃げろ!!」誰が言ったのかも覚えてない。でも、俺たちは全力で走り出した。後ろを振り返る勇気なんて、なかった。ただ、必死に逃げたんだ。
外に出た時、やっと息ができた気がした。でも、振り返ったら何もいなかった。何があったのか、今でも分からないけど、あれ以来、誰も旧校舎には近づかなくなった。
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