都会の外れにある廃墟のような場所、地元の人が近寄らない心霊スポットがあった。それは、長年使われていない古いトンネルだ。このトンネルには、戦後すぐに閉鎖され、誰もその理由を知らないまま放置されているという話が残っていた。都市伝説によると、トンネルの中で何かが「帰ってこない」らしい。
ある日、友人グループの一人が「本当に帰ってこないのか確かめよう」と言い出し、四人でそのトンネルに向かうことになった。夜の肝試しには最適だと、誰もが笑い飛ばしながら車に乗り込んだ。
トンネルは細く、周囲には木々が鬱蒼と茂っている。車のヘッドライトがぼんやりとトンネルの入り口を照らし出した。入口は鉄の門で封鎖されていたが、古く錆びついており、簡単に開いた。
「ここだよ」と、一番前を歩くリーダー格の友人が言った。彼は大胆にトンネルの奥へと進んでいった。他の三人もついていくが、足元の湿った音と風の音が妙に耳に響く。
トンネルの中は異常に静かだった。足音がこだまするだけで、誰も言葉を発することができなかった。不意に、誰かが振り返ってみると、さっきまであったトンネルの入り口が見えなくなっていた。
「おかしい、こんなに奥まで歩いてないはずだ」一人が言ったが、リーダーは構わず歩き続ける。「奥まで行こう、そしたら帰れるよ」と、リーダーは前を向いたまま答えた。
しかし、そのリーダーの歩き方に違和感を覚えた。肩が奇妙に引きつり、足取りが重く、不自然だ。後ろにいたメンバーが声をかけようとした瞬間、トンネルの奥から何かが見えた。それは…人影のようなものがこちらをじっと見ている。動かない。
「何だ、あれ?」一人が指を差した瞬間、リーダーは突然立ち止まり、振り返った。
「……帰ろうか」と、リーダーの声が、いつもより妙に低かった。顔も、さっきまでとは違うように見えた。誰もがぞっとして、一斉に背筋が凍った。目の前にいるのは本当にリーダーなのか? そう思った途端、トンネルの出口がまた見えた。
急いで走り出し、全員が外に飛び出すと、そこでようやく安堵の息をついた。しかし、気づくとリーダーだけがいなかった。
「どこ行った?」誰かが振り返ると、トンネルの奥からリーダーが一歩一歩こちらに向かってくるのが見えた。しかし、その顔には笑顔がなかった。そして、彼の口が不自然に動いていた。「……もう、帰ってこれないよ。」
その後、彼は誰も知らない街外れの病院で発見されたが、それからというもの、一言も口をきかなくなった。あのトンネルには、彼の何かがまだ残っているのかもしれない。
コメント