道路に落ちたおはじき

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Hさんがまだ小学生だった頃、彼の家の近くには古い道がありました。細い舗装されていない砂利道で、車もあまり通らない、子供たちがよく遊ぶ場所でした。

ある日、Hさんと友達数人がその道の端でおはじき遊びをしていたんです。おはじきはガラス製で、色とりどりで、夕方の太陽の光にキラキラと輝いていました。遊んでいると、誰かがふと「ここ、昔から不思議なことがよくあるって聞いたことない?」と話し出したんです。

「この道、夜になるとおはじきが勝手に動くんだってさ」と、誰かが言った瞬間、Hさんは気味が悪くなりましたが、みんな笑いながら「嘘だろ」と信じようとしませんでした。

その日は特に何もなく、Hさんたちは遊び終えると家に帰りました。

次の日、Hさんが一人でその道を歩いていると、何か足元で音がしました。パチン……カラカラ……という乾いた音。何だろうと思って足元を見ると、そこに一個のおはじきが落ちていました。Hさんは「あれ、昨日のおはじきかな?」と思いながら手に取ろうとしたんです。

でも、そのおはじきが、ほんの少しだけカタリと動いたんです。

風が吹いたのかと思いましたが、風もなく、あたりは静かです。おはじきが、ほんのわずかに自分で転がったように見えました。Hさんは怖くなって、そのまま家に帰りましたが、その夜のことです。

夜中、窓の外からカラカラ……という音が聞こえてきました。まるでおはじきが転がる音のような。

Hさんは布団の中で固まりましたが、気になって窓の外をそっと覗いてみました。すると、昼間におはじきが落ちていたあの道の上に、何かが光って見えます。ぼんやりとした月明かりの中で、道の上に無数のおはじきが転がっているのが見えたんです。

そして、そのおはじきの中に、一人の小さな子供の影が立っていました。小さな女の子が、黙々と一人でおはじきを並べているようでした。でも、Hさんはその子に何か違和感を感じました。顔が見えないんです。まるでぼんやりとしたシルエットだけが浮かんでいるような。

Hさんは恐怖に駆られ、すぐに布団に潜り込んで震えていました。音はしばらく続き、やがて静かになりました。

翌日、Hさんはその道を友達と歩きましたが、もうおはじきはどこにも見当たりませんでした。友達にその話をしましたが、誰も信じません。でも、Hさんはそれ以来、その道でおはじき遊びをすることはなくなったそうです。

後に地元の古老にその話をすると、昔、その道で小さな女の子が車に轢かれて亡くなったという話を聞かされました。彼女が遊んでいたのは、やはりおはじきだったそうです。

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