これは、僕の知り合いの話です。彼の名はKさん。ある日、Kさんは引っ越し先のマンションで不思議な出来事に遭遇しました。
そのマンションは、駅から少し離れた静かな住宅街にあり、立地もよく、家賃もお手頃だったそうです。Kさんはその部屋を気に入って、すぐに契約を決めました。初めての一人暮らしにワクワクしながら、彼は新しい生活をスタートさせました。
しかし、住み始めてすぐに、奇妙なことが起こり始めました。
夜、仕事から帰ってくると、カーテンの端がなぜか濡れているんです。Kさんの部屋は7階で、窓はしっかり閉めているはずなのに、雨が入るわけでもなく、原因がわかりません。最初は、気のせいかと思ってタオルで拭いてそのままにしていました。
でも、次の日も、またカーテンの端が濡れているんです。
その日は雨も降っていませんでしたし、窓もちゃんと閉まっていることを確認しました。それでも、カーテンの端だけがじっとりと濡れている。それに、なんとも言えない生臭いような、湿った匂いが漂ってきたんです。
「おかしいな……」
Kさんは不安になりましたが、仕事が忙しくて深く考える余裕もなく、そのまま過ごしていました。
ところが、夜中に突然目が覚めることが増え始めました。最初はただの寝苦しさだと思っていたんですが、夜中の2時過ぎになると、必ず何かに目を覚まされるような感覚がありました。目が覚めるたびに、ふと窓の方に目を向けると、カーテンの端が微妙に動いているような気がするんです。
「風か……?」と思いましたが、窓は閉まっています。風なんか入るはずがない。
でも、その夜、Kさんは何か異様な気配を感じ、思わず布団の中に潜り込んでしまいました。翌朝、恐る恐る窓のカーテンを確認すると、また端が濡れていました。しかも、今回はいつもより範囲が広く、かなり湿っていたんです。
気味が悪くなったKさんは、とうとうその部屋のことを友人に相談しました。すると、友人が何かおかしいと思い、霊感の強い知り合いに話を聞いてみることになりました。
その知り合いがKさんの部屋を見に来ると、部屋に入った瞬間に顔をしかめました。そして、すぐに「窓の近くに何かある」と言い出したんです。Kさんは驚きましたが、さらにその人は続けました。
「ここ、昔、水に関係する何かがあったんじゃないかと思う。窓の外、下の方を見てごらん」
Kさんは言われた通り、ベランダから外を見下ろしました。すると、下の階の部屋のベランダが薄暗く見え、その端に古びたバケツが置かれているのが見えました。友人の知り合いは、さらに続けます。
「ここで昔、水死者が出たかもしれない」
それを聞いたKさんは背筋が凍りつきました。彼が後で調べたところ、やはりそのマンションでは、過去に水害で亡くなった住人がいたという話がありました。水に浸かったその場所が、今のKさんの住んでいる部屋にあたる場所だったんです。
Kさんはその話を聞いてすぐに引っ越しを決めました。それ以来、カーテンの端が濡れることはなくなりましたが、あの濡れたカーテンの冷たい感触だけは、今でも思い出すたびに手に残っているそうです。
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