深夜ラジオの声

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これは、あるラジオ局で働いていた友人から聞いた話です。彼は深夜番組のディレクターをしていて、人気のあるトーク番組を担当していました。深夜のラジオって、昼間とは違ってどこか静かで不気味な雰囲気が漂っているんですよね。ラジオ局自体も昼間とは違ってスタッフが少なくて、薄暗い感じなんです。

その夜も、いつものように深夜2時過ぎ、パーソナリティがリスナーからのお便りを読み上げ、軽快なトークを繰り広げていました。リスナーからの相談やちょっとした愚痴、時には怖い話なんかも紹介されて、リラックスした雰囲気でした。

でも、その日は何か違っていました。放送が始まってしばらくして、スタジオのスピーカーから、妙なノイズが混じり始めたんです。最初は、電波の乱れか機械トラブルだろうと、誰も気にしなかったそうです。でも、ノイズの中に、はっきりと「何か」が混じっていることに気づいたのは、その次の瞬間でした。

パーソナリティが話している途中、突然スピーカーから低い声が聞こえたんです。それは、リスナーが送ってきた声ではなく、明らかに放送には関係のない、誰かの囁きのような声でした。パーソナリティも一瞬固まってしまい、何か聞こえたような表情をしましたが、プロなので何事もなかったかのように進行を続けました。

しかし、その囁きは消えるどころか、次第に大きくなり、はっきりと耳に届くようになってきました。「聞いて…いる…?」というような、低く湿った声。それはまるで、誰かがラジオの向こうから直接話しかけてくるような感覚でした。

ディレクターだった友人は慌てて音声機器をチェックしましたが、異常はありません。それでも、その不気味な声は続きます。ついに、パーソナリティも耐え切れなくなり、放送中に小さく「今の、誰ですか?」と呟きました。

その瞬間、スタジオ全体が異様な静けさに包まれました。そして、再びスピーカーから「こっち…来て…」というはっきりとした声が響き渡りました。それはリスナーでも、スタッフでもない、誰ともわからない声。全員が凍りつき、どうしていいかわからないまま、友人はとっさにCMを流して放送を中断しました。

その後、機械をチェックしても異常は見つからず、結局放送は再開されましたが、あの声が何だったのかは誰にもわかりませんでした。

ところが、放送が終わった後、スタジオを片付けていたスタッフが、とある不気味なことに気づきました。番組の途中、リスナーから届いたメールや手紙のリストには、ひとつだけ、誰も送っていないはずのメッセージが混じっていたんです。

そのメッセージにはこう書かれていました。

「いつも聞いています。次は、スタジオで一緒にお話しできると嬉しいです。」

差出人の名前は書かれていませんでした。そして、不思議なことに、そのメッセージは放送の前には存在しなかったと言います。誰が送ったのか、どうやってそこに現れたのか、誰にも説明できないまま、そのメッセージは謎のままです。

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