その年、地元では大きな祭りがあって、いろんな催し物があったんだ。その中でも目玉だったのが、伝統的な「催事用の船」を使った儀式。大きな木造の船が町中を練り歩くっていうものだった。船はもちろん海を行くわけじゃなくて、町中を引っ張りながら行列を作るんだよ。地元の歴史が反映された催しで、昔から続いてるらしい。
俺は友達と一緒にその祭りを見に行ったんだけど、初めて見るその船に圧倒された。巨大な木造船が車輪に乗っていて、地元の人たちが船を引いて練り歩いていたんだ。船の上には装飾が施されていて、旗や提灯が風になびいていた。
でも、その船にはもう一つ妙な特徴があった。船の周りを何人かの男たちが取り囲んでいて、長い「紐のようなもの」を手に持って、それを船の周りで振り回していたんだ。紐は太くて、まるで生きているかのように、くねくねと空中を舞い、男たちはそれを上手に扱いながら儀式を進めていた。
「何だろう、あの紐みたいなもの……?」と気になって、友達に聞いたけど、彼も知らなかった。見ると、その紐はただの飾りや道具じゃなかったんだ。動きが異様に速くて、時折、風に乗って「ヒュンヒュン」と音を立てながら振り回されていたんだ。
儀式が進むにつれて、船は町の広場に着き、男たちはその「紐のようなもの」をさらに激しく振り回し始めた。紐はまるで空気を切り裂くように、鋭い音を立てて周囲を舞い、船の周りで渦を巻いているように見えた。見物客もそれに引き込まれて、祭りの雰囲気は一気に熱を帯びてきたんだ。
でも、何かが変だった。紐の動きがあまりにも生き物のように見えて、ただの道具とは思えなかったんだ。振り回す男たちの顔もだんだん険しくなっていって、まるで何か見えない力と戦っているようにも見えた。紐がピンと張っている時なんか、まるでそれが男たちの手から離れようとしているかのようだった。
すると、突然、紐が激しく揺れ、まるで何かがその紐に引っ張られているかのように見えた瞬間があった。まるで、その紐の先には見えない何かがつながっていて、それが船を押し戻そうとしているかのような奇妙な力が働いているように感じたんだ。
その瞬間、俺は何とも言えない不安に襲われた。
結局、その儀式は無事に終わり、船は祭りの最後に神社へと奉納された。でも、あの「紐のようなもの」が何だったのか、そしてあの男たちが一体何と戦っていたのかは、誰にも分からないままだった。
祭りの後、地元の年配者にその紐のことを聞いてみたんだ。すると彼は少し顔を曇らせて、「あれは昔から使われてるものだよ。船を守るためのものさ。ただの紐じゃないんだ」と言うだけだった。
あの不気味な力を感じた瞬間を思い出すと、今でも背筋が寒くなる。何か見えないものが、あの船の周りに潜んでいたんじゃないかって、そう思うことがあるんだ。
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