その時、俺は一人暮らしをしていて、古いアパートに住んでいたんだ。古い建物だから、時々虫が出るのは仕方ないって思ってたけど、ある日、特に大きな「ムカデ」が部屋に出たんだ。
ムカデが苦手な俺は、慌ててなんとか駆除しようとしたけど、そのムカデ、妙に動きが早くて捕まえることができなかった。最終的に、ムカデは俺の目の前で壁の隙間にすっと入って消えたんだ。怖いし気持ち悪いし、もう完全にパニックだったけど、「まあ、もう出てこないだろう」って思い込んで、その日はなんとかやり過ごした。
でも、数日後の夜、またおかしなことが起こった。
その日は遅くまで課題をしていて、疲れてベッドに横になってたんだ。部屋は真っ暗で、静まり返ってたんだけど、突然、足元で何かが「ササッ」と動く音がしたんだ。
「まさか、またムカデか……?」と思って、急いでライトをつけたんだけど、何もいなかった。でも、確かに何かが動いた気がして、体がゾワッとした。まさかと思って、部屋中を見回したけど、やっぱり何も見つからなかった。
その時は気のせいだと思って、もう一度寝ようとしたんだけど、また同じように足元で何かが動く音がしたんだ。今度ははっきりと「カサカサ……」という音が聞こえた。怖くなってライトをつけた瞬間、目の前に衝撃的なものが見えたんだ。
そこにいたのは、ムカデじゃなかった。「人」だった。
いや、正確には「ムカデのような人間」だったんだ。そいつは四つん這いになって、異様に長い手足で部屋の隅っこを這いずり回っていた。しかも、その姿はまるでムカデが人間に変わったかのように、体が不自然に長く、関節が奇妙に折れ曲がっていたんだ。目がギラッと光って、こちらを見た瞬間、全身が凍りついた。
そいつはまるで俺に向かって這ってくるかのように動き始めたんだ。
「ヤバい!」と思って体が硬直してしまったけど、なんとかベッドから飛び起きて、部屋のドアに向かって逃げ出した。振り返る勇気もなく、そのまま外に飛び出して、息を整えることもできないくらい動揺していた。
結局、その夜は友達の家に泊めてもらったんだけど、次の日に戻ってきた時、あの「ムカデのような人間」はどこにもいなかった。部屋には何も異常はなかったけど、あの時の光景が頭から離れなくて、それ以来、ムカデを見るたびにあの人間の姿を思い出すんだ。
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