これは、俺が大学の時に友達と一緒に田舎に遊びに行った時の話だ。ちょっと変わった場所で、一面に広がる竹林があって、そこで散策しようってことになったんだ。静かで風が心地いい場所だし、竹の葉がサワサワと揺れる音がなんとも言えずリラックスできる場所だった。
その日は天気も良くて、俺たちはカメラ片手に竹林を歩き回ってた。道は細くて、ちょっとした迷路みたいになってるんだけど、自然の中にいる感じが心地よくて、時間が経つのを忘れてた。だけど、竹林の奥の方に進んでいくうちに、何か妙な違和感を感じたんだ。
ふと前を見ると、竹の間をスーッと何かが動いたように見えた。最初は風で竹が揺れてるだけかと思ったんだけど、よく見ると、それは「人」だった。いや、正確には「人の行列」だったんだ。
ぼんやりとした姿で、白い着物みたいなものを着た人たちが、静かに並んで歩いていた。声は全く聞こえなくて、ただ竹の間を縫うようにして、ゆっくりと進んでいく。何十人もいたように見えたけど、その姿はどこか薄ぼんやりしていて、はっきりとは見えなかった。
俺は友達に「おい、あれ見た?」って声をかけたんだけど、友達は全然気づいてない様子で、「何もないじゃん」って言うんだ。でも、確かに俺の目には、その行列がはっきりと見えていた。薄い霧の中を進むように、竹林の奥へと静かに歩いていく。
少し気味が悪くなって、俺は友達に「もう戻ろうか」って言ったんだ。でも、友達は「もう少し進もうぜ」と言って、どんどん奥へと進んでいく。俺は仕方なくついて行ったんだけど、その行列は視界から消えたり、また現れたりを繰り返してた。
そして、あるポイントに差し掛かった時、その行列が突然ピタッと止まったんだ。まるで何かを待っているかのように。俺は全身が寒気に包まれた。行列の先頭に立っていた人が、こちらをじっと見ているような気がしたんだ。いや、姿ははっきり見えないんだけど、その存在感がこちらに向けられているのが分かった。
俺はもう耐えきれなくなって、「本当に戻ろう!」って叫んで、友達を引っ張ってその場を離れた。後ろを振り返る勇気なんてなかった。
宿に戻ってから、地元の人にその竹林のことを聞いたら、「ああ、あそこは昔、よく葬列が通っていた場所なんだよ」と言われた。昔の村人たちが、亡くなった人を竹林を通って運んでいたらしい。それを聞いた瞬間、俺が見た行列がその「葬列」だったんじゃないかって、背筋が凍ったよ。
あの時、俺を見ていた先頭の人が誰だったのか、そしてあの行列が何を意味していたのか、今でもよく分からない。ただ、あの竹林にはもう二度と行きたくないと思ってる。
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