俺が子供の頃、毎年夏休みになると、家族で田舎に帰省してたんだ。祖父母が住んでる場所は、ほんとに何もない田舎で、携帯の電波も弱いし、遊ぶ場所もないし、都会に住んでる俺にとっては、正直あんまり楽しい場所じゃなかった。
行くたびに、「田舎、田舎、嫌だな……」って思ってたよ。
特に嫌だったのは、夜。都会の明るさに慣れてるせいか、田舎の夜はとにかく暗いんだ。街灯も少ないし、家の外は真っ暗。何かが動いてる気配がするんだけど、見えない。風の音とか、虫の鳴き声が余計に不気味に聞こえて、全然落ち着けなかった。
そんなある夏のこと、例年通り家族で田舎に帰ってたんだけど、その年はちょっと様子が違ったんだ。祖父母の家の近くにある古い神社で、何か「お祭り」があるって聞かされて、嫌々ながら行くことになった。
その神社、昼間はただの小さな神社なんだけど、夜になると妙な雰囲気が漂ってた。木々に囲まれてるせいか、すごく静かで、風が吹くたびに木の葉が揺れて、何かが隠れてるような気がするんだ。
お祭りって言っても、派手な屋台が並ぶようなものじゃなくて、地元の人たちが集まって小さな儀式みたいなことをするだけ。正直、全然興味がなかったから、俺は少し離れたところでぼーっとしてたんだ。
その時、突然背後から「おい、何してるんだ?」って声がしたんだ。
振り返ると、そこに小さな子供が立ってた。着物を着た、見たことのない子だったんだけど、その子の顔が妙に青白くて、暗闇の中で浮かび上がってるみたいに見えた。俺はびっくりして、「あ、ただ見てただけ」って答えたんだけど、その子はニヤッと笑って「この神社、嫌だな」って言ったんだ。
俺も正直なところ、田舎自体が好きじゃなかったから「だよな、俺もここ嫌いだ」って返したんだ。でも、その子はそのままニヤニヤしながら、「そうか、嫌なんだな」って言って、暗闇の中に消えていった。
その後、家族にその話をしたんだけど、「そんな子、見てないよ」って言われて、ますます不気味な気分になった。誰だったんだろう?お祭りに来てた子供だったのか、それとも……?
あれ以来、田舎に帰るたびにその神社のことを思い出して、やっぱり田舎の夜が嫌いになったんだ。あの「嫌だな」って言った子供の言葉が、今でも耳に残ってる。
田舎って、静かで落ち着くところかもしれないけど、俺にとってはどこか不気味な場所になってしまったんだ。
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