これは、少し前に友達と旅行に行った時の話なんだ。旅行って言っても、ちょっと変わった趣味を持つ友達がいて、廃墟巡りが目的だったんだよ。俺も廃墟とか興味がなかったわけじゃないから、一緒に行くことにしたんだけど、あの時のことは今でも妙に引っかかってるんだ。
俺たちが向かったのは、山の中にある昔の集落跡。今では完全に廃墟になってて、何軒か家が崩れかけたまま放置されてる場所だった。ネットで見つけたその場所は、心霊スポットみたいな噂もあるけど、正直、俺たちはそんなに気にしてなかった。写真を撮って、少し探検して帰るつもりだったんだ。
現地に着くと、まさに廃墟群って感じの場所が広がってた。草がボウボウに生えていて、建物はみんな壊れかけていて、静けさが不気味に漂ってた。友達はカメラを構えて、バシャバシャと写真を撮り始めたんだ。俺も少し離れて、スマホで何枚か写真を撮ってた。
それで、廃墟の一つの家に入ってみたんだけど、中は想像以上に荒れてた。壁は崩れかけていて、床も一部が抜けていて、古びた家具が散乱してたんだ。友達は相変わらず写真を撮ってたんだけど、俺は何か嫌な感じがして、早く外に出たかった。
「ここ、何かいるような気がしない?」って冗談っぽく言ったんだけど、友達は笑いながら「気にしすぎだよ」と言ってた。確かに、ただの廃墟だし、何もおかしなことなんてないはずだった。
でも、帰ってからが本当の奇妙な出来事だったんだ。
その日の夜、友達が撮った写真を送ってきて、「何か変じゃない?」って言ってきたんだ。俺は軽い気持ちで写真を見たんだけど、すぐにおかしいことに気づいた。
友達が撮った写真の中に、俺が立っている廃墟の窓から「何か」がこっちを見てるんだ。最初は気のせいだと思ったんだけど、よく見るとそれは「目」だった。人の目にしては異常に大きくて、まるで壁の中に埋まっているような感じで、その目だけが暗闇からこっちを見ていた。
しかも、その目はただの影や汚れじゃなかった。写真を拡大してみたら、まるで生きているかのように光ってるんだ。普通の人間の目よりも大きくて、異様に黒い瞳が写真の中でぼんやりと浮かび上がっていた。
ゾッとした俺は、他の写真も確認したんだけど、いくつかの写真にも同じように「目」が映り込んでたんだ。それも全部、俺たちが立っていた廃墟の窓や壁の隙間から、じっとこちらを見ている。
友達も「これ、ただの偶然かな?」って言ってたけど、正直あの目の感じはただの偶然じゃ説明できない。まるで俺たちが写真を撮っているのをずっと見ていたような、そんな気配を感じるんだよ。
その後、俺たちはその写真を消して、二度とその廃墟には行かなかった。でも、時々思い出すんだ。あの「目」、そして廃墟の中で何かが俺たちをずっと見ていた感覚を。写真に映っていたのは、一体何だったんだろうか。
それ以来、俺は廃墟に行くのが少し怖くなった。あの目がまたどこかで俺を見つめているんじゃないかって、ふと考えてしまうんだ。
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