ある日のこと、私は大学の友人たちと一緒に近くの山へハイキングに行くことになった。都会の喧騒から離れ、自然の中でリフレッシュするためだった。山の中腹にある古い神社まで登り、帰り道に少し寄り道をしてみようという話になった。
山道を歩いていると、途中で一軒の廃屋を見つけた。それは煤けた外観で、屋根は崩れかけ、窓は割れていた。明らかに長い間放置されているようだった。
「すごい、まるでホラー映画みたいだな」
友人のケンが興奮した声で言った。彼はオカルト好きで、こういった場所に興味を持っていた。私たちは少し怖い気持ちになりながらも、廃屋に近づいた。
「中を見てみようぜ」
ケンが提案した。私はためらったが、他の友人たちも興味を示していたので、一緒に廃屋に入ることにした。ドアは半開きで、押すとギシギシと音を立てて開いた。
中は薄暗く、煤けた壁が私たちを取り囲んでいた。古びた家具が乱雑に置かれており、埃が積もっていた。私は少し不安を感じながらも、部屋の中を見回した。
「ここ、何か変な感じがするな…」
私はつぶやいた。空気が重く、息が詰まるような感覚があった。その時、突然耳に微かな音が聞こえた。それはまるで空気が振動しているような音だった。
「聞こえるか…?」
私は友人たちに尋ねたが、彼らは何も気づいていない様子だった。私は音のする方に近づき、耳を澄ませた。振動音が次第に大きくなり、耳元で囁くように響いてきた。
「ここ、やっぱりおかしいよ」
私は友人たちに言ったが、彼らは興奮したまま部屋を探索していた。ケンが古い棚を開けると、埃が舞い上がり、彼は咳き込んだ。
「何もないな…」
ケンが言ったその時、振動音が急に大きくなった。私は耳を塞ぎたくなるほどの音が響き渡った。空気が震え、まるで何かが部屋全体を支配しているようだった。
「おい、何か変だぞ!」
私は叫んだが、友人たちは気づいていない様子だった。振動音がますます強くなり、部屋の中で何かが動いているのが見えた。それは見えない力で何かを殴るような音だった。
「早く出よう…!」
私は恐怖で震えながら友人たちに叫んだ。彼らもようやく異変に気づき、急いで部屋を出ようとした。しかし、その瞬間、見えない力がケンを殴りつけた。彼は叫び声を上げ、床に倒れ込んだ。
「ケン!」
私たちは恐怖で凍りつきながらも、ケンを助け起こそうとした。しかし、何も見えない力が再び襲いかかり、私たちを殴りつけた。私は痛みに顔を歪め、必死で廃屋から逃げ出した。
外に出ると、振動音は止み、静寂が広がった。ケンは肩を押さえながら、息を整えていた。
「何があったんだ…?」
私は息を切らしながら尋ねたが、誰も答えることができなかった。ただ、全員が同じ恐怖を感じていた。あの煤けた廃屋の中で、見えない何かが私たちを攻撃したのだ。
その後、私たちは二度とあの廃屋には近づかなかった。何が私たちを襲ったのか、答えは見つからないままだった。あの日の出来事が現実だったのか、それとも幻覚だったのか、今でも分からない。
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