惨敗

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ある夏の夜、私は大学の友人たちとキャンプに出かけた。川の近くにテントを張り、焚き火を囲んで夜遅くまで語り合う予定だった。都会の喧騒から離れ、自然の中で過ごすのは久しぶりで、私たちは皆、心から楽しんでいた。

夜が更けるにつれ、焚き火の明かりが揺らぎ、虫たちの鳴き声が耳に心地よく響いた。私たちはビールを飲みながら、何気ない話をしていた。誰かが川で泳ごうと提案し、私たちは笑いながら川に向かった。

「夜の川は危険だぞ」と誰かが冗談めかして言ったが、私たちは無視して川に飛び込んだ。冷たい水が体を包み、暑さが一気に引いていくのを感じた。夜空には星が輝き、川の中で浮かんでいると、まるで別世界にいるようだった。

しかし、その時だった。突然、足元に何かが触れた。私は驚いて水中を見下ろしたが、暗闇の中では何も見えなかった。友人たちも同じように何かに触れたようで、次々に水から上がってきた。

「何かいる…」

友人の一人がつぶやいた。私たちは急いで川から上がり、ランタンの明かりに集まった。皆の足元には、小さな黒い物体が張り付いていた。蛭だ。私は驚いて足を見下ろし、そこにも蛭が張り付いているのを見て血の気が引いた。

「嘘だろ、蛭なんて…」

私は慌てて蛭を引き剥がそうとしたが、蛭はしっかりと皮膚に食い込んでいた。友人たちも同じように蛭を取ろうとしていたが、蛭は次々に体に付いてきた。

「こんなのどうすればいいんだ…」

私たちは恐怖で叫び声を上げ、次第にパニック状態になった。蛭は皮膚を這い回り、次々と血を吸い始めた。私たちは何とかして蛭を引き剥がそうと必死だったが、数が多すぎて手に負えなかった。

その時、一人の友人が突然叫び声を上げた。私は驚いて振り向くと、彼の足元には異様に大きな蛭が張り付いていた。その蛭は普通の蛭とは比べ物にならないほど大きく、彼の血を吸いながら次第に膨れ上がっていった。

「助けて!この蛭が…」

彼の叫び声が耳をつんざいた。私は何とか彼を助けようとしたが、蛭は恐ろしい力で彼の足に食い込んでいた。血が次第に地面に広がり、彼の顔が青ざめていくのが見えた。

「これじゃ惨敗だ…」

誰かが呟いた。その言葉に、私は恐怖が全身を駆け巡った。私たちは完全に蛭に圧倒されていた。次第に私の意識も遠のいていき、暗闇の中に吸い込まれていった。

次に目が覚めた時、私は病院のベッドの上にいた。頭がぼんやりとしていて、全身に痛みが走った。医師が私に向かって何かを話していたが、何も聞き取れなかった。ただ、友人たちの姿が見えないことだけが分かった。

後で聞いた話では、私たちは地元の人々によって救助されたが、一人の友人が命を落としたという。あの夜の川で何が起こったのか、蛭がなぜあんなにも大量にいたのか、答えは分からない。

私は今でも川に近づくことができない。あの日見た蛭の光景が頭から離れず、夜になると夢に出てくることがある。あの時の惨敗が、今も私を苦しめ続けている。

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