野辺送りの案内人

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俺、最近引っ越してきたばっかりなんだけど、茜通りって場所に住んでるんだよね。ちょっと怖い話があってさ、聞いてくれる?

茜通りって、夕方になると本当に茜色に染まるんだよ。まるで空が燃えてるみたいに。最初はその景色がすごく気に入ってたんだ。でも、ある日、その通りで変なことがあったんだ。

その日、俺は仕事から帰ってきて、夕方の茜通りを歩いてた。空が赤く染まってて、すごく綺麗だったんだけど、なんかその日だけは雰囲気が違ってたんだ。いつもは人通りも少ない通りなんだけど、その日は特に誰もいなくて、静かすぎるっていうか。なんか、変な感じがしたんだよね。

そしたら、通りの向こうから黒い手袋をはめた男が歩いてきたんだ。なんか、その手袋が妙に目についた。黒い手袋って、普通の冬用の手袋とかじゃなくて、もっとなんていうか、古びた革の手袋みたいな感じで。彼は手袋をはめたまま、ゆっくりと歩いてきて、俺の横を通り過ぎたんだ。

その時、なんか変な臭いがしてさ、まるで腐った花みたいな匂いが一瞬漂ったんだ。気持ち悪くて、すぐに振り返ったんだけど、もう男の姿はどこにもなかった。茜通りはまっすぐで隠れる場所もないのに、いきなり消えたんだよ。

怖くなって急いで家に帰ったんだけど、後で調べてみたら、あの通りには昔から「野辺送り」の伝説があるって知ったんだ。茜通りは昔、村の外れの墓地に繋がる道だったらしいんだよ。そこで亡くなった人を送る「野辺送り」が行われてたんだって。

で、さらにゾッとすることに、あの黒い手袋の男も、昔から時々目撃されてるらしいんだ。村人たちは彼を「野辺送りの案内人」って呼んでたとか。亡くなった人をあの世に送る手伝いをしてたとか、そんな話なんだよ。

それ以来、茜通りを通るたびに、夕方の赤い空がなんか不気味に感じるようになった。あの黒い手袋の男がまた現れるんじゃないかって、つい考えちゃうんだよね。もし次に会ったら、俺もあの世に連れて行かれるんじゃないかってさ。

なんかさ、そんな話を聞いちゃうと、普通の道も怖く見えるよね。俺、最近はできるだけ茜通りを通らないようにしてるんだ。あの夕焼けの赤さが、なんか血の色に見えてきちゃってさ。

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