パーキングでのことでした

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深夜、長距離運転の疲れを癒やすために、高速道路のパーキングエリアに立ち寄った。大きなサービスエリアではなく、こじんまりとした施設で、駐車場には数台のトラックが停まっているだけだった。

トイレを済ませ、飲み物でも買おうと売店の方向に歩き出す。外灯は薄暗く、夜の空気は肌寒い。売店には誰もいないようで、シャッターが半分降りていた。それでも自販機は稼働していたので、ホットコーヒーを買い、車に戻ることにした。

飲みながらふと周囲を見渡すと、少し離れた場所にあるベンチに人影が見えた。そこには、長い髪の女性が一人座っている。こんな夜中に珍しいなと思いつつ、深く気に留めることもなく車に乗り込んだ。

エンジンをかけ、再び走り出そうとした時だった。バックミラーにちらっと映ったのは、さっきの女性。なぜか、こちらに向かって歩いてきている。暗がりの中で顔は見えなかったが、妙に視線を感じた。

「変だな……」
少し気味が悪くなり、車を出そうとアクセルを踏み込んだ。その瞬間、ドンッと車体に衝撃が走った。思わずブレーキを踏み、慌てて車外に出る。誰かを轢いたのかと思い、後ろを確認したが、そこには何もいない。

車体にも傷一つない。気のせいかと思い、周囲を見回すが、先ほどの女性の姿も消えていた。

不安を抱えながら車に戻り、再びエンジンをかけた。バックミラーを覗くと――そこに、彼女がいた。後部座席に座り、長い髪を垂らしてこちらをじっと見ている。

瞬間的に振り返るが、後部座席には誰もいない。だが、ミラー越しには確かに彼女が映っている。動けずにいると、彼女の口元がゆっくりと動いた。

「……ここで降りるよ。」

そう言われた瞬間、車内の空気が一気に冷え込んだ。震えながら外を見ると、目の前には、先ほどまでなかったはずの小さな脇道が見えた。

気づけば私は、その道を進んでいた。一本道の先に、また別のパーキングエリアのような場所が現れた。だが、そこには車も人もいない。見たことのない、まるで時間が止まったような場所だった。

彼女はもういなかった。しかし、ミラー越しにふと目をやると、後部座席には誰かの影が残っているように見えた――それは、もう確かめる気にもならなかった。

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