懺悔しろよ

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もう、何年前になるんでしょうかね。
あの日、私たちは放課後の教室に残って、くだらない話をしていた。
よくある悪ふざけです。教室に一人残って掃除をしていたを、笑いながらからかった。机を蹴ったり、ノートを隠したりして――**「懺悔しろよ」**って。

それが彼の口癖だったんですよね。
授業中、誰かがふざけて先生に怒られるたびに、**彼は小さな声で「懺悔しろ」**と言っていた。
冗談なのか、本気なのか、分からない言い方で。

だから私たちは、それを真似して笑っていたんです。
悪気なんてなかった――と、今でも言い訳したい。
でも、分かっていたんですよね。彼が本当に嫌がっていることを。

その日、私たちは最後まで意地悪を続けました。
ノートを黒板消しの中に隠し、彼の机の上にチョークで**「懺悔」**と大きく書いた。そして、「見つけてみろよ」って、教室を後にしたんです。

その翌日、彼が学校に来ることはありませんでした。

彼が川で見つかったという知らせを受けた時、誰も声を出せませんでしたよね。
川辺に、ぐったりと横たわった彼の姿――
靴は履いておらず、靴下だけが泥で汚れていた。

そして、手にはボロボロになったノートを握りしめていたんです。
それは、私たちが黒板消しの中に隠した、彼のノートでした。

警察は事故だと言いました。
夜の川に落ちて、そのまま溺れてしまったんだと。

でも、私たちは知っていますよね?
あの日、彼が何を探していたのかを。
それが見つかった時、彼は何を思ったのか。

……そして、
それから私たちが聞くようになった、耳障りな声を。

放課後の教室で、誰もいないはずの黒板の前から、
「懺悔……懺悔……」
あの声が、何度も、何度も。

私たちは一生、これを背負って生きていくのでしょう。
逃げても、忘れても――
耳に届くんです。

**「懺悔しろよ」**と。
あの声が、私たちを許す日は来ないでしょうね。

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