俺の家は代々続く稲作農家だ。毎年、村祭りの時期になると、立派な稲を収穫するためにみんなで頑張っている。だけど、俺は小さい頃から稲作が苦手で、正直言ってあんまりやる気がなかった。
ある年の秋、俺はどうしても収穫をサボりたくて、適当に田んぼの見回りを済ませて、近くの神社で昼寝をしていた。そしたら、いつの間にか夕方になっていて、日が沈む頃になってしまった。
「あー、家に帰るの面倒だな…」と思いながら、田んぼに戻ると、なんだかおかしなことに気づいた。田んぼの稲が、全て整然と並んでいるんだ。それも、俺がやったわけじゃないのに。
「ラッキー!」と喜んだ俺は、そのまま帰ろうとしたんだけど、ふと足元を見ると、小さな足跡が無数に続いていた。それは人間のものじゃなくて、何か小さな生き物の足跡だった。
俺は気になって、足跡をたどってみた。すると、稲の陰から小さな影が飛び出してきた。それはなんと、真っ黒な体に赤い目をした小さなカカシだった。しかも、カカシたちはピーピーと変な声を出しながら、稲を一生懸命に整えている。
「おい、これどういうことだ?」と思わず声を上げると、カカシたちはピタッと動きを止めた。そして、一斉にこちらを振り返った。
「お前、サボってたな?」とカカシの一つが言った。俺はドキッとして、否定する間もなく、カカシたちは次々と俺を取り囲んだ。
「俺たちは、サボりは許さないんだぞ。次はお前がカカシだ!」と彼らが声を揃えると、突然、俺の体が動かなくなった。どうやら、稲を整える代わりに、俺が一晩カカシになる羽目になったらしい。
翌朝、体が元に戻った俺は、慌てて家に帰り、サボらずに稲作を手伝うことを誓った。カカシたちの目が光る中で働くのは、もうごめんだからな。
それ以来、俺はちゃんと働くようになった。だって、サボるとカカシたちが黙っていないからね。村の稲作が毎年順調なのも、あのカカシたちのおかげなのかもしれない。
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