これは、俺が大学の夏休みに友達と一緒にキャンプに行った時の話なんだ。
俺たちはちょっと変わった場所が好きで、地元で有名な「ダム」に行くことにしたんだ。普通のダムじゃなくて、何十年も前に村がダムの底に沈んだっていう、いわくつきの場所だった。ネットでもその話はよく出てて、「昔の村が水の底に沈んでる」だとか、「夜になると誰かの叫び声が聞こえる」なんて噂が流れてた。
まあ、そんな話は半分冗談だと思ってたし、俺たちは肝試しがてらそのダムの近くでキャンプしようって軽い気持ちだったんだ。到着した時はまだ夕方で、ダム湖の水は静かで、周りの景色も穏やかだった。風が涼しくて、ちょっとしたハイキング気分だったよ。
でも、夜になると雰囲気が一変した。
ダムの周りは街灯もほとんどなくて、辺りは真っ暗。俺たちはテントを張って、焚き火を囲んで話してたんだけど、やっぱりあの「沈んだ村」の話題になったんだ。
「この下に本当に村があるんだろうか?」
「何か見えるかな?」って、俺たちは笑いながら話してたんだけど、ふと、友達の一人が「静かにしてみろ」って言い出した。
みんな耳を澄ますと、確かに風の音に混じって、かすかに「叫び声」みたいな音が聞こえてきたんだ。それは遠くから、でもはっきりと、誰かが助けを求めるような声だった。最初は「風の音だろ?」って思ったけど、何度も聞くうちに、確かにそれは人間の声だって分かってきた。
「おい、本当に誰かいるんじゃないか?」って、みんな急に真剣な顔になって、音がする方をじっと見つめた。ダムの湖面は静かで、波一つ立っていない。でも、その静けさの中から、はっきりとした叫び声が響いていた。
声はどんどん大きくなっていって、まるで水の底から浮かび上がってくるような感じだった。俺たちはもう完全にビビってたけど、誰もその場から動けなかった。怖いけど、目が離せない。どこかで「これはただの風の音だ」と思い込みたい気持ちがあったんだろう。
でも、次の瞬間、湖の真ん中あたりで何かが揺れたように見えたんだ。暗い水面に何かが浮かんでるように見えた。その時、友達が「おい、やめろよ!ふざけんな!」って叫び出したんだ。
でも誰もふざけてない。みんなその揺れる影に釘付けになってた。何かが湖の中からゆっくりと現れるように見えたんだ。
それ以上見るのが怖くなって、俺たちはその場から逃げるようにテントを片付けて車に飛び乗った。もうその夜は誰もダムに近づくことなんて考えられなかった。
翌日、地元の人に話を聞いたら、「ああ、そのダムでは昔、沈んだ村の声が聞こえるって言われてるよ」って、まるで普通のことのように言われた。俺たちは半信半疑だったけど、あの夜に聞いた叫び声は、間違いなく本物だった。
あのダムの底には、今でも誰かが沈んでいるんじゃないか。そんな気がしてならないんだ。
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