これは、俺の地元で昔から言われてる「ジンクス」の話なんだけど、ちょっと気味が悪いんだ。
俺が中学生の頃、クラスメイトの間で一つの「ジンクス」が広まってた。それは「夜中の12時ちょうどに、近所の公園にある滑り台に行ってみろ」ってやつ。滑り台の一番上に立って、「ここから見えるものは、今の自分にとって一番大切なものだ」っていう話だったんだ。
最初はみんな半信半疑だったけど、友達の何人かが実際に試してみたらしい。そしたら、あるやつは好きな女の子の家が見えたとか、またあるやつは自分の家が見えたとか、みんなそれぞれ「大切なもの」が見えるって言うんだ。それで、ジンクスが本当だって噂になって、俺も興味を持った。
で、ある夜、俺も友達と一緒にその公園に行ってみることにした。夜の公園って結構不気味で、誰もいないし、風の音だけが聞こえる中、俺たちはその滑り台のところまで行った。
「本当に見えるのか?」って不安と期待が入り混じった気持ちで、俺は滑り台の上に登った。そして、時計が12時ちょうどを指すのを待って、滑り台の一番上から街を見渡したんだ。
最初は何も特別なことが起こらない。ただの静かな夜景が広がっているだけだった。でも、その瞬間、ふと視界の端に奇妙なものが映ったんだ。
それは、遠くの街灯の下に立っている「人影」だった。その人影は動かずにじっとこっちを見ているように感じたんだ。何かがおかしい。普通の人間とは違う気配だった。最初は「これが俺にとって大切なものなのか?」って思ったけど、そんなはずがない。
その時、背後から友達が「おい、どうしたんだ?」って声をかけてきて、ハッと我に返った。もう一度見直してみたけど、その人影はどこにもいなかった。
その日は何事もなく家に帰ったんだけど、気になって次の日、もう一度一人であの滑り台に行ってみたんだ。夜中の12時には少し早かったけど、誰もいないはずの公園で、またあの「人影」が見えたんだ。
今度はもっとはっきりと分かった。滑り台の上に立つ俺をじっと見ている。その人影は一歩も動かずに、ただそこに立っていた。
それ以来、あのジンクスには何か裏があるんじゃないかって思うようになった。友達は「家が見えた」とか「好きな子の家が見えた」とか軽く言ってたけど、俺だけが見たあの人影は、一体何だったんだろう?
今でもその公園を通るたびに、あの夜のことを思い出す。もしかしたら、あの「ジンクス」は本当で、俺にとって一番大切なものは「見てはいけないもの」だったのかもしれない。
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