遠いよ

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これは、俺が中学生の時に体験した話なんだ。ちょっと不可解というか、不気味で、今でもあの時のことを思い出すと、何とも言えない感覚になる。

ある夏休みの夕方、友達数人と近くの公園で遊んでたんだ。日が沈みかけて、公園がだんだんと薄暗くなってきた頃、「かくれんぼしようぜ」って誰かが言い出した。まあ、子供の頃からみんなでよく遊んでた遊びだから、その日も軽い気持ちで始めたんだ。

俺が鬼になって、目をつむって「十数えるから、隠れてくれよ」って言いながら、木の陰で顔を隠したんだ。普通なら、みんながダッシュで隠れて、そのまま見つけるまでのゲームが始まるって感じなんだけど、その日はちょっと様子が違ったんだ。

「いーち、にーい、さーん……」と数を数えている途中で、急に背後から誰かが囁くように「遠いよ」って声が聞こえたんだ。ゾクッとしたけど、すぐに「友達の誰かがからかってるんだろう」と思った。

でも、その「遠いよ」って声、妙に寂しげで、どこか懐かしい感じがしたんだ。気のせいだと思いながらも、数え終わって目を開けて、隠れてる友達を探し始めたんだ。

だけど、何かおかしい。いつもなら近くに誰かが隠れてるのがすぐ分かるのに、その日は公園がやけに静かで、人気が全く感じられなかった。公園をぐるっと一周しても、誰一人見つからない。もしかして、みんな裏の道とかに逃げたのか?と思って、俺も公園の外に出ようとしたんだけど、その瞬間、また背後から「あーあ、遠いよ」って声がしたんだ。

今度は確実に耳元で聞こえた。誰もいないはずなのに、まるで誰かがすぐ後ろに立って囁いたみたいに。

さすがに怖くなって、「おい、もう出てこいよ!隠れてるのは分かってるから!」って大声で叫んだんだけど、返事はなかった。それどころか、公園全体が急に冷たく感じられて、辺りが真っ暗になっていることに気づいたんだ。

もう限界だと思って、その場を離れようとした瞬間、また背後から「十、数えたら、来るんだよ」って声が聞こえたんだ。もう全身に鳥肌が立って、全速力で公園を飛び出したんだよ。

結局、友達の姿はどこにも見つからなくて、みんなに会ったのは次の日だった。どうやらみんな、あの日途中で帰ってしまったらしい。俺一人だけ、あの公園で「かくれんぼ」を続けていたことになる。

誰が囁いたのか、あの「遠いよ」という声の意味は何だったのか、未だに分からない。あの後も何度か公園に行ってみたけど、もう二度とあんな声は聞こえなかった。

だけど、時々思い出すんだ。「遠いよ、十数えたら来るんだよ」って、あの声が頭の中で繰り返されるんだよね。

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