緑のガラス戸

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私が引っ越したアパートは、少し古びた建物だった。内装は古いが、どこか落ち着いた雰囲気があり、私は気に入っていた。特に、リビングにある大きなガラス戸が気に入っていた。外には小さな庭があり、ガラス戸越しに見る緑の景色が心を癒してくれた。

ある日、私はガラス戸を開けて庭に出た。春の風が心地よく、庭には草花が咲き乱れていた。私は庭の手入れをしながら、ふとガラス戸に目をやった。そこに奇妙なことに気づいた。

ガラス戸の一部が緑色に染まっていたのだ。それはまるで何かがガラスに映り込んでいるかのようだった。私は不思議に思い、ガラス戸に近づいてみた。手で触れてみたが、特に異常は感じられなかった。

「何だろう…」

私は首をかしげながら、緑色の部分をじっと見つめた。それはぼんやりとした形で、何かの影のようにも見えたが、何も見えなかった。私は気味悪さを感じながらも、そのままガラス戸を閉め、部屋に戻った。

それから数日が過ぎた。私はその緑色の部分のことを忘れかけていたが、ある夜、再び奇妙な現象が起こった。夜中に目が覚めると、リビングのガラス戸が緑色に光っていたのだ。

「何だ…?」

私は恐怖でベッドから飛び起き、リビングに向かった。ガラス戸は緑色の光を放っており、その光が部屋全体を照らしていた。私はガラス戸の前に立ち、じっと見つめた。

その時、ガラス戸の向こうに何かが動いた。緑色の影がゆっくりと形を変え、何かが現れた。私は息を呑んだ。それは人の形をしているように見えた。ぼんやりとした輪郭が浮かび上がり、まるで誰かがガラス戸の向こうに立っているかのようだった。

「誰かいるの…?」

私は震える声で問いかけたが、返事はなかった。ただ、緑色の影がじっとこちらを見つめているように感じた。私は恐怖で動けなくなり、ただその場に立ち尽くした。

その時、ガラス戸がカタカタと揺れ始めた。まるで誰かがドアノブを握っているかのように。私は叫び声を上げ、後ずさりした。すると、緑色の光が急に消え、部屋は再び暗闇に包まれた。

「何だったんだ…?」

私は恐怖で震えながらガラス戸を見つめたが、もう何も見えなかった。ガラス戸は静かにそこに立っているだけだった。私はドアに近づき、手で触れてみたが、冷たいガラスの感触があるだけだった。

その後、私はガラス戸のことを気にしないようにした。しかし、夜になるとあの緑色の光が現れるのではないかという恐怖が頭から離れなかった。毎晩カーテンを閉め、ガラス戸に近づかないようにしていた。

ある日、私は隣人にこの話をしてみることにした。隣人はこのアパートに長く住んでいる女性で、私の話を聞いて驚いた顔をした。

「あなたも見たのね…」

隣人はそう言いながら、私に話をしてくれた。

「実は、前にここに住んでいた人も同じことを言っていたの。ガラス戸が緑色に光るって…でも、その人はすぐに引っ越してしまったのよ」

その言葉に、私は背筋が寒くなった。緑色の光が何を意味しているのか、誰も分からない。ただ一つ確かなのは、このガラス戸には何かがあるということだった。

それ以来、私はガラス戸に近づかないようにしている。あの緑色の光が再び現れるのではないかという恐怖が、今も私の心に深く刻まれている。ガラス戸の向こうに何がいるのか、何が私を見ているのか、答えは見つからないままだ。

あのガラス戸が私に見せたものが何だったのか、私は知るすべがない。ただ、あの緑色の光が私に何かを警告しているような気がしてならない。

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