その日は、どんよりとした曇り空が広がっていた。雨が降りそうで降らない、湿った空気が肌にまとわりつくような天気だった。私は近くの図書館に行くために自転車を漕いでいた。空を見上げると、灰色の雲が重く垂れ込めていて、いつ雨が降り出してもおかしくないような様子だった。
道を進んでいると、ふと前方に奇妙なものが見えた。何かが空中を漂っている。風に乗って、くるくると舞っているように見えた。私は興味を引かれ、自転車を止めて目を凝らした。
「なんだ、あれ…」
小さな影が空中で揺れていた。最初はゴミかと思ったが、次第にその形がはっきりしてきた。それは何か細長いものが束になって漂っているように見えた。近づいて見ると、それはまるで内臓のようなものだった。
「えっ…」
私は思わず声を漏らした。目の前で、細長いはらわたのようなものが風に乗って飛んでいる。私は驚いて自転車を降り、さらに近づいて確認した。確かに、空中を漂っているのは内臓のような物体だった。それはリアルに見え、まるで生きているかのように動いていた。
私は恐怖で後ずさりしたが、同時に好奇心も湧いてきた。なぜこんなものが空中を漂っているのか、全く理解できなかった。辺りを見回しても、人影はなかった。私はその場に立ち尽くし、はらわたが空中で揺れている様子を見つめていた。
その時、突然強い風が吹いた。はらわたは風に流され、私の方に向かって飛んできた。私は驚いて後ろに飛びのいたが、はらわたは私の頭上を通り過ぎていった。風に乗って、まるで何かを探しているかのように空中を舞っていた。
「ありえない…」
私は呟き、再び自転車に乗ろうとしたが、足が震えてなかなか動けなかった。空はますます暗くなり、風が強くなってきた。はらわたは空中を舞い続け、やがて私の視界から消えていった。
その後、私は図書館に向かったが、心の中には不安が広がっていた。あのはらわたがどこから来たのか、なぜ空中を飛んでいたのか、答えは見つからなかった。図書館で本を読もうとしても、頭の中はあの光景でいっぱいだった。
夕方になり、私は図書館を出て帰り道を急いだ。空はすっかり暗くなり、風が冷たくなっていた。道を進むと、再びあの奇妙な感覚に襲われた。はらわたが空中を漂っているような気がして、私は何度も空を見上げた。
しかし、何も見えなかった。ただ曇り空が広がり、冷たい風が吹き抜けていくだけだった。私は足を速め、自宅に向かった。
家に帰り、ドアを閉めた時、ようやく安堵のため息をついた。しかし、頭の中にはあの奇妙な光景が焼き付いていた。はらわたが飛んでいるという、現実ではあり得ない光景が、私の心に深い影を落としていた。
その夜、私は何度も目を覚ました。窓の外から風の音が聞こえ、私ははらわたが再び現れるのではないかという恐怖に苛まれていた。夢の中で、はらわたが私の周りを舞い、私を包み込むような感覚に襲われた。
朝が来ると、私は疲れ果てていた。曇り空は続いていたが、風は穏やかになっていた。私は外に出て、空を見上げた。何も異常はなかった。
時折、曇りの日になると、私はあのはらわたが再び現れるのではないかという恐怖に襲われる。風が吹くたびに、あの奇妙な感覚が蘇る。何かが私を見ているような、そんな気がしてならない。
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