振り回す子供

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私が住んでいるマンションには、小さな公園がある。滑り台やブランコ、砂場があり、近所の子供たちがよく遊んでいる場所だ。夏の夕方になると、公園は子供たちの笑い声で賑やかになる。

ある日の夕方、私は仕事から帰ってきてベランダに出た。暑い一日だったが、夕方になると少し涼しくなり、風が心地よかった。公園ではいつも通り、子供たちが遊んでいる。ベランダから見下ろすと、砂場の近くで一人の子供が遊んでいるのが見えた。

その子供は、髪が長くて黒いシャツを着ていた。背中を向けているので顔は見えなかったが、何か一人で夢中になっているようだった。私は特に気にせず、ベランダの椅子に座ってくつろいでいた。

しばらくして、ふと視線を感じて再び公園を見下ろした。さっきの子供がこちらを見ているように思えた。遠くて顔はよく見えなかったが、私に向かって何かを言っているように感じた。私は手を振ってみたが、子供は動かなかった。

次の瞬間、その子供が突然、頭を大きく振り回し始めた。まるで何かに取り憑かれたかのように、激しく首を左右に振っていた。その動きは尋常ではなく、まるで頭が抜けそうな勢いで振り回している。私は驚き、声も出せずにその様子を見ていた。

「何をしているんだ…?」

私は呟いたが、子供は振り回し続けた。髪が空中に舞い、彼の動きに合わせて周囲の空気が揺れているのが見えた。誰かが止めに行くべきだと思ったが、体が動かなかった。

突然、子供は動きを止め、再び私の方を向いた。顔が影になっていて表情は見えなかったが、私は冷たい視線を感じた。子供は一瞬立ち止まったかと思うと、急に走り出して公園を出て行った。

私は放心状態でその場に立ち尽くしていた。あの子供は一体何だったのか。なぜあんな行動をしていたのか。何かを訴えているような気がしたが、それが何なのか全く分からなかった。

次の日、私はマンションの管理人にその子供のことを話してみた。管理人は首を傾げ、「そんな子供は見たことがない」と言った。近所の住人にも聞いてみたが、誰もあの子供を知らなかった。

その後も、私は何度かベランダから公園を見下ろしていたが、あの子供の姿を見ることはなかった。しかし、あの日の出来事が頭から離れなかった。何かが、何かがあの子供をあのようにさせていたのではないかという思いが、私の中に残っていた。

ある夜、夢の中で再びあの子供に出会った。彼は公園の砂場に立ち、再び頭を振り回していた。私が近づくと、彼は振り返り、無表情のまま私を見つめた。その目には、底知れぬ闇が広がっていた。

私は夢から覚め、全身に冷たい汗をかいていた。時計を見ると、深夜の2時だった。夢とは思えないほど現実的な感覚に、私は震えが止まらなかった。あの子供は夢の中だけでなく、現実のどこかに存在しているのではないか。そんな不安が私を襲った。

それ以来、私は夜になると公園に近づかないようにしている。あの子供が再び現れるのではないかという恐怖が、私の中に根付いている。公園で遊ぶ子供たちを見るたびに、あの日のことを思い出し、心の奥底で何かが揺れ動くのを感じるのだ。

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