写真

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ある日のこと、僕の友人である中村が不思議な体験をしたと言って、僕に相談してきました。中村は写真が趣味で、休日にはよく風景や街並みを撮影しに出かけていました。そんな彼がある日、古い商店街を訪れた際のことです。

その商店街は、時代に取り残されたように古びた店が立ち並び、昼間なのに人影もまばらで、どことなく陰気な雰囲気を漂わせていました。中村はその寂れた風景に惹かれ、夢中でシャッターを切っていました。

その時、ふと古びた骨董品店の前で足を止めました。店の前には古い写真が山積みになっていて、埃をかぶったそれらの写真はまるで時間が止まっているかのようでした。中村は興味を引かれ、その写真を一枚一枚手に取って見ていました。

すると、その中の一枚に目が留まりました。それは、昔の家族写真のようで、着物姿の家族が庭で微笑んでいるものでした。しかし、中村はその写真をじっと見つめているうちに、ある奇妙なことに気付きました。

家族の後ろ、少し離れた場所に、黒い影が写り込んでいたのです。最初は撮影者の影だろうと思いましたが、よく見るとその影には顔がありました。ぼんやりとした輪郭の中に、確かに人の顔が写っていたのです。

中村は不気味に思いながらも、その写真を購入し、自宅に持ち帰りました。帰宅後、彼は写真を改めて確認しましたが、確かにそこには影の顔が写り込んでいました。気味が悪くなりながらも、彼はその写真を机の上に置いて寝ることにしました。

夜中、中村は何かの気配で目を覚ました。部屋の中は真っ暗で、静まり返っていました。しかし、彼は確かに感じました。誰かが彼を見つめているような視線を。心臓が高鳴り、汗がにじみ出てきます。

その時、微かに、机の方から音が聞こえました。カタカタと、何かが動くような音。中村は恐る恐る電気をつけ、机の方を見ました。そこには、写真が置かれていましたが、写真の中の家族が微笑んでいる姿は変わりませんでした。しかし、その背後にあった黒い影の顔が、まるでこちらを見つめているかのように、はっきりと浮かび上がっていたのです。

中村はその写真を急いで引き出しにしまい込みましたが、その夜から奇妙な出来事が続きました。彼が寝るたびに、誰かが耳元でささやくような声が聞こえるのです。「見つけた…見つけたぞ…」

その声は次第に大きくなり、やがて彼は眠れなくなってしまいました。困り果てた中村は、写真を持って再びあの商店街を訪れました。しかし、骨董品店はもぬけの殻で、店主の姿はどこにもありません。写真を返そうとしても、受け取ってもらうことはできませんでした。

中村はその後、写真を燃やそうとしましたが、炎の中に入れると奇妙なことに写真は燃えず、黒い煙だけが立ち上りました。それからというもの、中村の周りでは不思議なことが起こり続けています。まるであの影が、彼の後をついてきているかのように。

皆さんも、古い写真を見つけたら気をつけてください。そこに写っているものが、あなたのすぐそばにいるかもしれませんから。

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